- Hot ‘n’ Nasty
- The Fixer
- You’re So Good for Me
- C’mon Everybody
- Old Time Feelin’
- 30 Days in the Hole
- Road Runner/Road Runner’s ‘G’ Jam
- I Wonder
- Sweet Peace and Time
1972年発売のスタジオ・アルバムとしては5作目。ピーター・フランプトンとスティーブ・マリオットの双頭バンドとしてスタートしたハンブルパイだが、マネジメントはバンドにレット・ゼッペリン路線を求め、ライブアルバム「Performance: Rockin’ the Fillmore」では成功を納めるが、ピーター・フランプトンは脱退。「Frampton Comes Alive!」へと成功の道を歩むことになる。方向性の違いは明らかであった。
本作はピーター・フランプトンの後任としてクレム・クレムソンが加入した初のアルバム。コロシアムの「Colosseum Live」(1971)でのギタープレイを聴き、引き抜いたそうだ。ピーターが去ったことで、ステーブはバンドの主導権を握り、コンポーザー、ボーカリストとしての才能を遺憾なく発揮することになる。アルバムに収録されたハンブルパイのオリジナル曲「30 Days in the Hole」や「Hot ‘n’ Nasty」は、ロック史に残る名曲として聴き継がれている。現代の感覚でもスーパーフライやミスター・ビッグ、ブラック・クロウズらがカバーをしているように時代を超えた魅力があるようだ。キッスのポール・スタンレーは長年愛聴しているアルバムのひとつとして本作を上げている。
Hot ‘n’ Nasty
クレジットがないので分からないが、コーラスで参加しているCSN&Yのスティーヴン・スティルスがオルガンを弾いているかもしれない。まあマリオットだとは思いますがこのオルガンが、ジミー・スミスやチャールズ・アーランドを彷彿とさせるシャープさで、ギターとピアノとのアンサンブルは、とてもスリリング。ボーカルは、高域域のシャウトが鋭さを増している。本来ならストーンズ・タイプになりそうな曲をアグレッシブなオルガンと、ワウを利かせたギターが、ハイブリットなロックにしている。故に時代を超えた名曲として評価されているのだと思う。この時期のライブをラジオ放送した音源を元にしたアルバムが発売されています。そこで聴けるライブバージョンは歌も演奏も更に迫力が増している。
30 Days In The Hole」
7枚目のシングル。内容は「レバンノン産ハシシ」「シカゴ・グリーン」等マリファナの銘柄紹介で、その摂取効果を述べている。不法所持で30日間の拘留になるよというストーリーとオチはコミカルで、銘柄の紹介も言葉遊びも含め少しユーモラスな感じがある。この内容をストーンズ調の曲にしているのは、深読みだとは思いますが、彼らへのオマージュでしょうか。曲の導入を、さびのリフレイン「30日間の拘留」のアカペラで始めるのはユーモラスで面白い。しかもシングルヒット。
バンドによるストレートなロックは「ブラウン・シュガー」のオマージュかもしれないひしゃげた音色のギターリフを軸にマリオットの潰した声がジャンキーっぽく、重いグルーブのリズム隊と男臭いグレッグのコーラスが渋く脇を固めている。Gov’t Mule、Mr. Big、Ace Frehley、The Black Crowesがカバーしている。みんな経験者ですね。
The Fixer
重いギターリフとタイトな演奏がハンブル・パイらしいブルースロック。クレムのギターはブルージーなフレーズだが、少しワウをかけブラック・ロック様な雰囲気も加わった。歌詞はブルースの常套句をコラージュしオマージュした、レッド・ツェッペリンも得意な歌詞改変の英国ブルースロック。
You’re So Good for Me
アコースティックなイントロから静かにグレッグが歌い始め、スティーブと黒人女性がコーラスで加わり、ストーンズの「無常の世界」のようなスワンプ・ロック的仕様で、ゴスペル風に盛り上がる。聴くほどに味わい深くなる佳曲。アコースティク・ギター響きが気持ちいい。バンド演奏なので、ドラムも要所でバタバタと暴れる。
C’mon Everybody
エディ・コクランのカバーをハードロック化。ザ・フーの「Live at Leeds」収録”Summertime Blues”を完全に意識していますね。スローにして重いグルーブは増したが、勢いがない。これはこれでいいのかもしれないが、ザ・フーの解釈と比較してしまうと、パワーとスピードに欠けてしまっているのが残念。
Old Time Feelin’
“ブリテッィシュ・ブルースの父“アレクシス・コーナーがゲスト参加。50年代のロンドンで、彼とシリル・デイビスらを中心に繰り広げられた黎明期のロウなブリティシュ・ブルースを再現したかのよう。タイトル通りフィーリングたっぷりでうれしい収録曲。味わい深い一曲です。
Road Runner/Road Runner’s ‘G’ Jam
ジュニア・ウォーカーのカバーで、スティーヴン・スティルスがハモンドオルガンを演奏している。前半は歌中心で後半は”G”で、ギターがねちっこく絡みファンキーなジャム・セッションになる。ジミ・ヘンドリックが「Electric Ladyland」で試みた、ボ・ディドリーの「I’m man」を素材にトッラフィックのステーブ・ウィンウッドのオルガンとジミ・ヘンドリックジャムが繰り広げた” Voodoo Child (Slight Return)”を意識しているのかもしれませんね。
I Wonder
スローブルース。スティーブ・マリオットは自身の黒い喉を活かすギタリストとして、白羽の矢を立てたのがクレム・クリムソン。彼が弾いたコロシアムの”Stormy Monday“のギターソロを聴いて、引き抜いたそうだ。クラプトンぽくもジミヘンぽくもある。チロチロと時にワウを効かせたギターが渋い。引き抜いた成果がここにある。
Sweet Peace and Time
アルバムの締めくくりは反戦ソングでヘビーなロック。グレッグのベースも声もドスが効いて迫力満点。ドラムもギターも声を振り絞るスティーブも荒々しく、暴走する展開はツェッペリンぽくもある。久々に聴いて評価を改めてました。
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