「The Razors Edge」(レイザーズ・エッジ)は1990年のアルバム。カナダのバンクーバーで録音され、プロデューサーは、ヒット請負人ブルース・フェアバーン。“Thunderstruck” や ”Moneytalks” 等のヒット曲を収録したアルバムは、欧米で大きなヒットを記録した。ドラムのサイモン・ライトが脱退し、ジミー・ペイジとポール・ロジャースのバンドザ・ファームのスキンヘッドのクリス・スレイドが加入した。
- Thunderstruck
- Fire Your Guns
- Moneytalks
- The Razors Edge
- Mistress for Christmas
- Rock Your Heart Out
- Are You Ready
- Got You by the Balls
- Shot of Love
- Let’s Make It
- Goodbye & Good Riddance to Bad Luck
- If You Dare
Thunderstruck
シングル発表されたAC/DCを代表する曲のひとつ。現在でもライブではイントロだけで観客のボルテージを沸騰させてくれる大定番。個人的には前作収録の ”Heat seeker”と当曲が、AC/DCに興味を持つ切掛けとなった。出だしはシンバルによるシンプルなリズムとアンガスの手弾きによるメカニカルなギターのフレーズから。ザ・フーの「無法の世界」辺りのフレーズをシンセではなくギターで弾いてみようというノリだと思う。また新加入クリス・スレイドのビートがなければこの曲は成立しない。ちょい長めの導入から、「サンダー」のコーラスが囃し立て、メインボカールのブライアンが登場する頃には、完全にテンションは上がり、バンギングした首が痛くなる。
ブライアンの声力もすごいけど、冷静に分析すればシンプルな構成の曲が、ギターリフと演奏のノリとメリハリで、ここまで盛り上がる曲になるものなのか。ライブでの演出を想定した曲の構成がパーフェクトなのですね。ホントにびっくりさせてくれた曲。カミナリの一撃といった内容で本当にそのまま一撃くらったストーリーで歌詞を読んでも意味は分からない。
Fire Your Guns
アルバムの中でも最速のビートを持つハードロック。息もつかせぬ執拗なギターリフとドラムはパンキッシュで、完全に頭をやられる。鉄壁のアンサンブルから、バンドのハイエナジーな演奏ポテンシャルの高さが伺える。ライブでも観客を熱狂させる一曲。
Moneytalks
「オーダーメイドの仕立てのいいスーツに、運転手付きの高級車、ダイヤモンドに毛皮も。みんな利用しきったら、売り払え」と。豪華なライフ・スタイルや物質的な欲望がテーマ。90年代にはAC/DCも大手企業並みにビジネス的な成功を納め、メンバーはそれぞれ世界各地に邸宅を構えるお金持ち。自虐的で皮肉を込めた拝金主義賛歌は、ゆったりと余裕を感じるビートに、お金を称える明るい曲調でポップですらある。英語詞も聞き取りやすく、世界各地で最大のヒットになったのも納得の一曲。
The Razors Edge
チェンジ・オブ・ペースで、重くミディアムなグルーブが最高にいい。このアルバムの中では比較的オーソドックスで従来のスタイルだが、クリス・スレイドのドラムが新風をもたらしている。
Mistress for Christmas
ジングルベル・ジングルベルとあのダミ声が唱える。クリスマスに赤い服着た愛人が欲しい。赤いのと3Pをして天国に行きたいソング。ボン・スコット時代から変わらぬユーモラスで、おバカな悪ガキのクリスマスソング。もはやパロディ。
Rock Your Heart Out
内なる悪魔を開放し全力でロックをすることがテーマ。悪魔の音楽=ロックン・ロールの伝統を踏襲したノリのいいハードロック。左右でユニゾンしないギターのズレが気持ちいい。アンガスのギターソロもいつも通り最高。十分にシングルヒットするポテンシャルを感じる。オーソドックスでパワフルでなサイモン・ラッドから、スクエアでシャープなノリのクリス・スレイドにドラムが代わると、グルーブが変化し直線的なビートでも新たなアンサンブルが楽しめる。
Are You Ready
重いヘビーメタルなグルーブなのにアンサンブルも勢いがあり構成もキャッチー。シングルカットされてニュージーランド1位になっている。歌詞はいつものAC/DCらしいエロい暗喩が満載。刑務所での慰安コンサート設定はやりすぎの気はしますけどね。
Got You by the Balls
ビジネスマンと女性の間の話ならピントきますよね。AC/DCいつものあれですよ。タイトル見れば分かりますよね。日本では「胃袋を掴め」という表現がありますが、やはり男は「玉」を掴まれたら負けですね。
Shot of Love
ドラムがシンプルなリズムキープに徹しているロックン・ロール。AC/DCの曲はどれも同じと思われているけど、アルバム毎に試行錯誤や実験を繰り返し、絶妙なアップデートで彼ららしいアルバムを届けてくれる。プロデュサーのフェアバーンの尽力か、このアルバム収録曲は本当に全てキャッチー。
Let’s Make It
ミディアムテンポで少しブルージー。いつものAC/DCスタイル。
Goodbye & Good Riddance to Bad Luck
「さよなら。悪運とおさらば」今回はエロの要素は少なめで、運のないギャンブルで負け尽くしのブルース。
If You Dare
アルバム最後はちょい早めのロックン・ロール。このノリは新人バンドでは絶対に出せない鉄壁のアンサンブル。もう感謝しかない。
あとがき
本人たちはシンプルなロックン・ロールバンドのつもりで、私もヘビーメタルとは少し違うかなと思います。AC/DCにはハード&ヘビーなロックン・ロールという紹介が一番しっくりきます。これだけハードでヘビーなのに、一般大衆に受け、もはやキャラクターでサブカルチャーのいちジャンルである。セールス、ライブの集客力もさすが世界トップ・クラスのモンスター・バンド。もう一回 “Thunderstruck“を聴こう。
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