ローリング・ストーンズのアルバム「It’s Only Rock ‘N Roll」は1974年のアルバム。
“If You Can’t Rock Me” からのインスピレーションだと思いますが、ロック界の帝王が民衆に降臨する姿を描いた豪華絢爛で退廃的なイメージのイラストは、デヴィッド・ボウイの「ダイヤモンド・ドッグ」も手掛けたガイ・ペイルアートの作品。「たかがロックンロール。でも大好き」というアルバム・タイトルと少々ベクトルが違うのも仕方ないですね。
- If You Can’t Rock Me
- Ain’t Too Proud to Beg
- It’s Only Rock ‘n Roll (But I Like It)
- Till the Next Goodbye
- Time Waits for No One
- Luxury
- Dance Little Sister
- If You Really Want to Be My Friend
- Short and Curlies
- Fingerprint File
If You Can’t Rock Me
83年の「スティル・ライフ」では”Get Off My Cloud”とメドレーで演奏されるように、ライブの序盤で演奏されるハードなロックンロール。キースとミック・テイラーの役割がリフとリードにはっきりと分担された、ストーンズの曲としては稀有なリフ・ロック。
この曲で歌われるロックスターとステージに群がる女性たちのスキャンダラスなイメージが、アルバムのジャケットに反映されているのでしょうね。「ダイナマイト」と歌詞で形容されるワッツのドラムとキースのベースは、重心の低いグルーブでスキャンダラスな歌詞とマッチしている。
Ain’t Too Proud to Beg
テンプテーションズのカバー曲で、モータウンらしい華やかな雰囲気を保ちながらも、ストーンズらしいロックなテイストを加えている。曲にアクセントをもたらすビリー・プレストンのピアノの貢献が大きい。東京ドームでの来日公演でも披露されていました。
It’s Only Rock ‘n Roll (But I Like It)
元々ミックが思いついたタイトルのフレーズのようですが、ロン・ウッドのファンとしては、彼のアルバム「俺と仲間」制作時のアウトテイクをキースが引き取り、名曲に仕上げた事実には複雑な思いがよぎります。そんな個人的な思いはありますが、ストーンズの曲として最高の仕上がりだと思います。
T.REXのグラムスタイルのブギーに最接近したのはこの曲でしょうね。ミックによる歌詞は「もし俺がステージで血を流したら満足するか?」と一節があるように、バンドに対し批判的な報道をするマスコミへの皮肉と諦めを込めた歌詞だそうです。
It’s Only Rock ‘n’ Roll, Ronnie Woods original home recording with David Bowie
最近、ロンの歌とギターの入ったオリジナル・テイクが You tubeで聴けるようになりました。これでキースが何を足し、何を引いたかのプロセスが明白になった。ロンのテイクは、デビッド・ボウイのコーラスも聴けるチャック・ベリー風。もし『俺と仲間』に収録されていれば、話題になったかもしれない仕上がりです。できれば「俺と仲間」の拡張版で正式に収録してほしい。
Till The Next Goodbye
カップルの微笑ましい光景が詩的にかなりメロー。静かでアコースティクなバラードは都会的。
Time Waits for No One
ミック・テイラーのギターソロを聴くための曲。エリック・クラプトンの後任として、ブルース・ブレイカーズで腕を磨いたテイラーの集大成となる名演です。これを聴いてしまうと、ストーンズのリード・ギタリストとしての次が見えなくのるのも分かる。
Luxury
リズムが単調なのは残念だが、ギターはドライブして気持ちいいし、ギターソロも味がある。ミックとキースのハモりはこの時期だから聞ける有り難さで、少しコミカルで皮肉な歌詞もストーンズらしい。思いっきりレゲエにするとか、アレンジがもう少し練られてればね。
Dance Little Sister
ハイヒールとタイトスカートのお姉さま方に一晩中踊れ!と。ゴリゴリのギターリフに冴えるリードギター、イアン・スチュワートの転がるピアノにミックのボーカルはハイテンション。曲との勢いと歌詞、バンドのアンサンブルが完璧に調和したストーンズらしい素晴らしいロックンロール。
If You Really Want to Be My Friend
ジャガーとリチャーズによるオリジナル。コーラス・グループ仕立ての曲で、フィラデルフィア・ソウルのブルー・マジックがバックで参加している。ミック・ジャガーがリードを成りきりで歌う。
Short and Curlies
「It’s too bad, she′s got you by the balls」70年代のロック・アルバムは、こういうユーモア溢れる曲を収録するゆとりがありましたね。
Fingerprint File
ウォーターゲート事件から着想を得た曲のようです。FBIによる指紋の採取、逃亡する監視対象のターゲット。アルバム最後によくぞ、このな劇場型緊張感MAXな曲をぶち込んでくれましたと喝采をあげたい。ファンクなテイラーのベースライン、エフェトかけまくりの2本のギター、ビル・ワイマンによるシンセサイザー、コーラスを含めその他諸々全ての音がひしゃげて歪んでいる。ブレイクも終盤のミックの芝居仕立てのヒステリックなボーカル・ワークも最高。「Love You Live」で再現を試みるがこの再現は不可能だ。
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