イアン・ハンターの5枚目のスタジオアルバム。邦題『双璧のアウトサイダー』はクリサリスより1981年に発売。ザ・クラッシュのミック・ジョーンズとミック・ロンソンがプロデュースを担当している。ザ・クラッシュの面々やミックの当時のガールフレンド エレン・フォーリーにトッド・ラングレン他、豪華?ゲストが参加している。録音は主にニューヨークのパワー・ステーションスタジオで行われ、エンジニアは前作に続きボブ・クリアマウンテン。
- Central Park n’ West
- Lisa Likes Rock n’ Roll
- I Need Your Love
- Old Records Never Die
- Noises
- Rain
- Gun Control
- Theatre of the Absurd
- Leave Me Alone
- Keep on Burning
イアン・ハンターは、普通のロックに飽き足らず、クラッシュのLondon Calling (79)、Sandinista! (80)辺りのニュー・ウェーブなアルバムを作りたくて、ミック・ジョーンズをプロデューサーに迎えたようだ。クラッシュお得意のレゲエやエスニック、ダブやファンク等の音楽フォーマットをあつらえ、イアン・ハンターの創造的野心に応えている。
Central Park n’ West
当時ニューヨークの住民のイアン・ハンターは、まだ物騒だったセントラル・パーク周辺での喧噪を曲のモチーフにしたそうです。モット~ソロ期におけるハンターお得意のロックン・ロール。共同プロデュースも務めるミック・ロンソンのギターはいつも通りキャッチーでメロディアス。セントラル・パークの喧噪を反映してか、曲には疾走感と躁的な勢いがある。ニュー・ウェーブな装飾音と電子ドラムの音がいただけないが、それでも十分に魅力的。半世紀経った今では逆に新鮮で、このアレンジでOKだと思う。
Lisa Likes Rock n’ Roll
ニュー・ウェーブなフォーマットで、ロックン・ロールを愛するリサというモット~ソロ期における得意な題材を試みるも、スタイル的に少し無理があるように思える。イアン・ハンターもノリノリの様子ですがね。
I Need Your Love
地声もでるが、少し気取ったクルナー・ボイスで愛を熱唱する。ビッグ・バンド風のオールデイズな曲調にミック・ジョーンズのクラッシュなコーラスが良い。久々に聴くといい。本当にコーラスはトッドラングレンなのか?
Old Records Never Die
この曲への思いは、高校生の時に読んだ鳥井賀句さんの記事から引き継いでいる。ジョン・レノンが亡くなり、追悼の意で曲の歌詞を引用されていた。レコードや音楽の持つ永遠の魅力を歌った詩でノスタルジーなメロディが泣ける。キンクスの「セルロイド・ヒーローズ」も同様に泣ける。
Noises
実験的な曲でハービー・ハンコックのセクスタントかヘッド・ハンターズの演奏のようだ。ダブやエレクトロニクスの影響、ラップにもトライしている。
Rain
メランコリックな雰囲気。
Gun Control
銃規制をテーマにした社会的メッセージを含む曲だそうだ。これはオールド・スタイルのロックだがハンターのオリジナルとしては少しクオリティは落ちる。
Theatre of the Absurd
多分イアン・ハンター唯一のレゲエ。歌の内容はよく理解できないが、「仕事がある人は滅多にいないし、僕が笑うことなどさらに稀だ」なんて不条理劇場というタイトル通りの明るい内容ではない。
Keep on Burning
情熱を燃やし続けろというメッセージ。ピアノがゴスペル調だなと思って聞いていたが、少し驚く位、ペースアップして、映画「ブルース・ブラザーズ」でお馴染み、牧師さんに黒人ブラザー&シスターによる教会での大盛り上がりの様相。
Leave Me Alone
少し気取った歌い方でイアン・ハンターらしいロックではない。失礼ながらカラオケで歌うムード歌謡のようだ。
あとがき
私も所有しているが、沢山のボーナス曲を収録したデラックス版も発売されている。エルビスへのオマージュなのかクラッシュの面々への共感なのか。ジャケットの気取った様子のリーゼント・スタイルが珍しいですね。”Old Records Never Die”を知っている日本人はどれだけいるのでしょうか?絶対一度は聴いてほしい名曲です。
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