The Who [Who’s Next]

ROCK
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  1. Baba O’Riley
  2. Bargain
  3. Love Ain’t for Keeping
  4. My Wife
  5. The Song Is Over
  6. Getting in Tune
  7. Going Mobile
  8. Behind Blue Eyes
  9. Won’t Get Fooled Again

ザ・フー「フーズ・ネクスト」
71年リリースのアルバム。元々「ライフハウス」という近未来を舞台としたロックオペラを構想されたが、バンドメンバーにもそのビジョンが理解されず、結局プロジェクトは頓挫してしまった。その後再編集してまとめたのがこのアルバムという事。現在ではデラックス・エディションや「ライフハウス」としても正式に発売をしている。ピートの構想したディストピアとネットワークで個人が繋がる世界、そしてロックによる体制打破という構想は、71年当時ではインターネットも携帯のない時代では早すぎたのだろう。逆に言えばピートの未来を見てきたかのような先見性を特筆すべきだろう。コンセプトに関しては様々な側面から語られているので、私としては単純にアルバムについて語りたい。

”Baba O’Riley”の歌詞にある荒野(Waste Land)のイメージなのだろが、「2001年宇宙の旅」で登場し、サルに知性を与え文明のトリガーとなった謎の物体を想定した、アルバム中央にそびえるモノリスが何とも思わせぶりで謎めいているではないか。後年知ればこれは実際に土留めに使われたコンクリートの塊で実物であり(最近場所も特定された)、しかもメンバーの影かと思いきやおしっこを引っかけた跡ではないか。実際に3人はズボンのチャックを上げている途中である。何とも不埒で思わせぶりなジャケットではないか。音の面ではアナログシンセの連続音を背景にハードなロックが展開される様は、近未来的で初めて聴く驚きと衝撃を与えてくれた。真のプログレッシブ・ロックである。

1. Baba O’Riley
ピートが現在でも信者かは分からない。当時サンタナやジョージ(ビートルズ)、ジョン・マクラフリンなどロックスター達が入信していたヒンディー教の中で、ピート・タンジェントが帰依していた精神的指導者メヘル・ババの“Baba”とアメリカのミニマリスト作曲家テリー・ライリーの”Riley”を合わせた造語がタイトルのようだ。数あるThe Whoの曲の中でも特に人気があり、名曲の誉れが高い曲である。

冒頭のフレーズは、ライリーの影響を受けたピートが、アナログ・シンセにババの生体に関する数値を入力し、自動作曲したものである。何とも胡散臭いが、この訳ありで制作されたアルバムの放棄された近未来的コンセプトをにおわす演出としてこのフレーズは意味深であり、最高の導入である。このフレーズに導かれるハードでドラマチックな展開は、聴く者の意識を覚醒させ、最後には一抹の清涼感に達成感、疲労感さえももたらす。数あるライブバージョンでは[Kids are Alright]もいいが、 2001年の9.11チャリティコンサート「The Concert for New York City」がよい。

2. Bargain
ピートが James Gang 時代に知り合ったジョー・ウォルシュから贈られた名機、1959年製のグレッチ・チェット・アトキンス・ギターが使用されている。ジョー・ウォルシュは後にイーグルスに加入し、「ホテル・カリフォルニア」の制作に関わったギタリスト。この曲のギターフレーズと音色は、ジョー・ウォルシュを思わせるコードの響きが特徴で、ハードロック色が強い。ロジャー・ダルトリーのボーカルも非常にパワフルで、ヘビーメタルの一歩手前と言えるほどの迫力がある。曲の内容はザ・フーには珍しい普通のラブソングようだが、一途な神への愛と献身を表している。

3. Love Ain’t for Keeping
アコギの効いたシンプルなラブソング。「芝に寝転んで・・君がお茶を煎れてくれて・・さあ横にお座りよ・愛を交わそう」という感じ。何か深いメッセージがあるのかもしれない。

4. My Wife
ジョン・エントウィッスルが作詞・作曲し、リードボーカルを担当。ザ・フーのライブの定番であり死ぬまでこの曲を演奏した彼の代表作。初めてまともに歌詞を読んだが、嫁に追われ殺される恐怖に捕らわれたジョン自身が、やれピストル、戦車をよこせやら、柔道の黒帯に機関銃をもたせてボディガードをさせろだとか。実にユーモラスで笑える内容であった。

5. The Song Is Over
ライフハウスのフィナーレを飾るはずの楽曲だけあって、ドラマチックで静と動の交差する感動的なバラード。詩のメッセージも終末感とポジティブな希望の決意が交差する内容である。ニッキー・ホプキンスのピアノとザ・フーの演奏はドラマチックな曲を演奏するに相応しい名演であり屈指の名曲との評価も納得である。

6. Getting in Tune
ピートが求める精神性とすでにロックスターである自己の荒ぶる魂の調和がもたらすハーモニーを静と動のコントラストを豊かにドラマチックに盛り立てる名演で名曲である。

7. Going Mobile
実際にピートが所有していた移動式のオートハウスの事であり「公害も気にしない、エアコンは快適、徴税管も警官も俺を捕まえられやしない。何故なら俺はオートハウスなのだから」と歌う歌詞が笑えるロックンロール。

8. Behind Blue Eyes
青い瞳の奥にある悪党の心の吐露を描くハードボイルドな曲。青い瞳の時点でヒーローぽいが「ライフハウス」の悪役の視点で描く私的な独白であり愛や含蓄に富んでいる。さびのコーラスは分厚く、静から動へのコントラストは抑制が効き、ハードなロックでありながらバラードである。

9. Won’t Get Fooled Again
ザ・フー屈指の名曲名演。”Baba O’Riley”同様にシーケンサーの鳴りが聴衆の期待を高め、ピートの分厚いコードギターが突入してくる。ここまでを長い導入とし、ロジャーは力強く革命や変革へのシニカルで現実的な表現の歌詞をエネルギッシュに歌う。静のパートでは例のシークエンスが鳴り響き、テンションの高い歌と演奏は共に高いままクライマックスまで突入する。「再びコケにされないと跪いて誓う」と稀代のシャウトまで。

曲の下敷きにはザ・フーもライブでカバーしているエディ・コクランの”Summertime Blues”があるのだろう。その曲想を踏まえひとつ高い次元に物語を仕上げている。歌詞のオマージュは、やはりクラマックスの一つ「Meet the new boss, same as the old boss」だろう。「また同じような上司がくるんだろう」と。散々聴衆を鼓舞して、最後にニヒルな諦観をぶち込んでくる。(ピートの冷めた癖がでてますね)

ライブのラストで演奏する機会の多い曲だけに、映像等の記録に残る名演は多い。「Kids are Alright」に収録された1978年のシェパートン・スタジオでのライブパフォーマンスでは、ジョンのメタリックなベース音がよく捉えられているのと、映像的な演出もあり素晴らしい演奏の記録だ。テンションの高いピートが、腕をぶん回す例のギターのミル演奏に、間奏ブレイク後、カメラに向かって膝滑りで突っ込むピートのアクション。それを狙うカメラワークとクライマックスへの演出。これですよ。

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