Ian Hunter [Welcome to the Club]

Mott the Hoople

元モット・ザ・フープル(Mott The Hoople)のイアン・ハンターのソロ名義のアルバムですが、相棒ギタリストのミック・ロンソンを再び迎えた新バンドによる79年LAはロキシー・シアターでの記録。観客の熱気が伝わるクラブで、バンドのメンバーもそのエネルギーで更に熱が入るという相乗効果。適度に編集はされているようで、パンキッシュでシャープなバンドの音になっている。ハンターのボーカルはベストワークといえる素晴らしさで声量もシャウトも冴えている。ロンソンは大きく厚みのある流麗なフレーズはそのままに、切れの良いギタープレイを聴かせてくれる。ハンターを含めば最大3ギターに2キーボードのバンド編成で、アレンジには幅があり、メンバー全員でつけるコーラスには厚みがあります。

時代に会場と観客の熱気にバンド演奏と録音技術が応えた素晴らしいライブアルバムです。

  1. F.B.I.
  2. Once Bitten Twice Shy
  3. Angeline
  4. Laugh At Me
  5. All The Way From Memphis (
  6. I Wish I Was Your Mother
  7. Irene Wilde
  8. Just Another Night
  9. Cleveland Rocks
  10. Standin’ In My Light
  11. Bastard
  12. Walking With A Mountain/Rock ‘n’ Roll Queen
  1. All The Young Dudes
  2. Slaughter On Tenth Avenue
  3. One Of The Boys
  4. The Golden Age Of Rock And Roll
  5. When The Daylight Comes
  6. Medley: Once Bitten Twice Shy/Bastard/Cleveland Rocks
  7. We Gotta Get Out Of Here
  8. Silver Needles
  9. Man O’ War
  10. Sons And Daughters
  • Ian Hunter – lead vocals, guitar, piano, harp
  • Mick Ronson – lead guitar, Moog synthesizer, mandolin, vocals
  • Tommy Morrongiello – guitar, vocals
  • Tommy Mandel – keyboards
  • Martin Briley – bass
  • Eric Parker – drums
  • George Meyer – keyboards, vocals, saxophone
  • Producer – Ian Hunter, Mick Ronson

1973年開業のLA ロキシー・シアターは、サンセット・ストリップ沿いの有名なライブハウス。ロックやグラムメタルの創成期に関わってきた会場でニール・ヤング、ブルース・スプリングスティーン、ボブ・マーリー、ガンズ・アンド・ローゼズなど、数々の伝説的アーティストが出演している。ステージは比較的低く、観客との距離が近いため、臨場感のあるライブ体験ができるクラブとして知られています。イアン・ハンターは当初2晩のブッキングでしたが、熱狂的なファンの盛り上がりが評判を呼び、結局7晩をソールドアウトした伝説的なライブの記録として知られています。

1. F.B.I.
“ボン・ソワール LA” のご挨拶からシャドウズの ”F.B.I” で会場をウォームアップ。75年のボブ・ディラン「ローリング・サンダー・レヴュー」を経て、イアン・ハンターバンドに合流したロンソンの挨拶代わりの一曲。後にブライン・メイも同じアレンジでカバーをしている。

2. Once Bitten Twice Shy(恨みつらみのロックン・ロール)
75年ハンターのソロデビューアルバム「双子座伝説」から。チャック・ベリーマナーのギターのイントロから、ハンターのボーカルはさびのあるポリープ声で最高のライブ・アルバムの予感。このライブ映像の出所は不明ですがカッコいいので載せています。ストーンズのライブ・アルバム「エル・モカンボ」に匹敵するとは言いすぎでしょうが、狭いステージでのタイトな演奏は視覚的にも最高にカッコいいクラブライブです。

3. Angeline
71年モット・ザ・フープルの『Brain Capers』から。アルバムでは若干もっさりしていましたがスピードアップしたシャープな演奏。ハンターのハーモニカにアル・クーパー風のオルガンがディランのフォークロック期を思わせるナイスな仕上がりです。エンディングのタイトルを連呼するハンターの絶唱が素晴らしい。

4. Laugh At Me
69年モット・ザ・フープルのデビューアルバム『Mott The Hoople』からソニー・ボノのカバー。ゆったりとしたメロディをオルガンが奏でるフォークロック風。ボーカルとコーラスも一体となったシャープなアレンジで過去の曲が甦りました。

5. All The Way from Memphis
73年モット・ザ・フープルの『Mott』から。アルバムでは若干もっさりしたピアノ主導の曲でしたが、チャック・ベリー風のイントロがついたアレンジはまさにベリー風のロックン・ロールに様変わり。序盤に代表曲を惜しみなく披露した構成で観客は盛り上がります。この曲も後にブライン・メイがライブアレンジでカバーをしています。

6. I Wish I Was Your Mother
73年モット・ザ・フープルの『Mott』から。ペースを落とし家族の愛憎を描いた感傷的なバラード。

7. Irene Wilde
76年ハンターのアルバム「All American Alien Boy」から。観客が曲に引き込まれる様子が伺われるしっとりとしたバラード。果たして作者の実体験なのでしょうか?今なら怖い実名暴露の愛憎が裏返った話で、曲作りを始める切掛けが描かれています。

8. Just Another Night
79年の4枚目のソロアルバム『You’re Never Alone With A Schizophrenic』から。ここに収録されたライブバージョンの方がラフなノリで気に入っています。

9. Cleveland Rocks
前曲と同じく『You’re Never Alone With A Schizophrenic』収録のヒットシングル。79年にはクリーブランドでのライブも行われたようで、当地ソングでロック讃歌の曲はさぞ盛り上がったでしょう。(後に30周年記念盤で公開されている)ロキシーのライブでは後半に地名が連呼され、シカゴ、サンフランシスコ、アメリカ、カルフォルニアと連ね、最後にLAロックで観客を沸かせる。7夜連続ソールドアウト。この瞬間に立ち会いたかった。

10 Standin’ In My Light
ハンターの魅力はストーンズばりのパワフルなロッカーだけではなく、スローなゴスペル調にも力量を発揮します。ここでは深いエコーのかかった歌い上げるバラード。割とスタジオバージョンに近い印象です。

11. Bastard
スタジオ・バージョンではジョン・ケイルのシンセサイザーも入った前衛的な印象の曲でしたが、ワイルドなノリのゴツゴツしたロッカーとしての迫力が増しました。

12. Walking With A Mountain/Rock ‘n’ Roll Queen
70年モット・ザ・フープルのセカンド『Mad Shadows』とファーストからのロックンロール・メドレー。やはりもっさり感のあった原曲より躍動感が増したライブ仕様です。

13. All The Young Dudes
CD化の際に4曲追加され実際の曲順が不明ですが、クロージングは恐らくこの大名曲だったのではないでしょうか。しっとりと大人しい演奏です。

14. Slaughter On Tenth Avenue
ハンターが幕に引けた後、ライブを締めるミック・ロンソンが主役のベンチャーズのヒット曲をカバー。LPではC面ラストがこの曲でした。(D面は別物)

15. One Of The Boys
CDでリイシューされた時の追加収録曲。モット・ザ・フープルの曲。作者のひとりミック・ラルフスはバッド・カンパニーでギターリフを「キャント・ゲット・イナフ」として再利用した。

16. The Golden Age Of Rock And Roll(ロックン・ロール黄金時代)
ハンターは「少しばかりNYのトイレットの歌」と紹介している。ドゥーワップで始まる導入部分が加わったナイスなアレンジ。やはり躍動感のある仕上がりです。曲タイトルに相応しいモット・ザ・フープルのもうひとつの代表曲といえる名曲。

17. When The Daylight Comes
CDでリイシューされた時の追加収録曲。

18. Medley: Once Bitten Twice Shy/Bastard/Cleveland Rocks
CDでリイシューされた時の追加収録曲。

19. We Gotta Get Out Of Here
LPのD面に収録されたスタジオ作。エレン・フォーリーもコーラスで参加しているディスコから出ようというディスコ曲。

20. Silver Needles
ヘロインですね。シド・ヴィシャスについてという解説を見ますが、本当ではなさそうです。

21. Man O’ War
面白い曲スタジオ作品です。「ダイスを転がせ」風の完全にストーンズです。

22. Sons And Daughters
Roxy Liveのアウトテイクの様です。離婚後の娘と息子のへの懺悔の思いの様です。これも「メインストリートのならず者」期のストーンズ流のカントリーを思わす素晴らしい曲です。

あとがき
モット・ザ・フープルのベスト盤程度の予備知識しかなく買ったアルバムです。You Tubeでみるモットのビンテージ・ライブは流石にワイルドなノリでした。こちら79年のライブもシャープさでは負けていません。今でも聴きたくなるアルバムです。

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