『Free Beer And Chicken』はJohn Lee Hookerが74年にABCからリリースしたアルバム。小出斉さんの「ブルース・ガイドブック」でジョン・リー・フッカーの異色の作品として紹介されていた一枚です。1950年代にブルースマンとしてキャリアを築いた彼が1974年にこんなファンキーなアルバムを出していたとは思いませんでした。それにしても変なタイトルとジャケットですね。
私はジョン・リー・フッカーの定番曲 ”Boogie Chillen” やドロドロのスロー・ブルースが好きなのですが、JBやファンカデリックを思わすファンキーな演奏をバックに渋いブルース・ボイスがのる “Make It Funky” のような曲は新鮮な驚きです。74年時点で56歳のフッカーの声は全盛期よりも深く渋みを増し、ファンキーな曲でも独特の存在感を放ちます。レアグルーブ的な評価には全く同感ですが、ブルース好きの私にはハウリン・ウルフのスロー・ブルースをカバーした“Settin’ On Top Of The World”、自身の代表曲のひとつを再演したブギーの“One Bourbon, One Scotch, One Beer”がお気に入りです。

- Make it funky
- Five long years
- 713 blues
- 714 blues
- One bourbon one scotch one beer
- Homework
- Bluebird
- Settin’ on top of the world
- You’ll never amount to anything if you don’t go to College
- I know how to rock
- Nothin’ but the best
- (You’ll Never Amount to Anything If You Don’t Go to) Collage (A Fortuitous Concatenation of Events)”
Make It Funky
ファンキーなエレピとワー・ワー・ワトソンのファンキーなカッティング、重いベースにホーンが絡む曲はもうJB。もう一歩でフェラ・クティというのも分かります。御大は短いフレーズを深い声でつぶやく定番のスタイル。ローウェル・フルソンの”Tramp”のようにファンク・ブルースはありますが、JB流ファンクに御大のボイスの組み合わせはファンク・ブルースの上をいく融合。
Five Long Years
エディ・ボイドのスロー・ブルース。ここではジョー・コッカーの声が目立ちます。当時インパルスに在籍していたサム・リバースがフルートで参加している。
713 Blues/714 Blues

サム・リバースと同じくインパルス人脈のクリフォード・コールターはビル・ウィザースのプロデューサーとしても知られていますが、70年に「East Side San Jose」というアルバムを出している。彼のファンキーなクラビネット、シュガー・ケイン・ハリスのヴァイオリンはいい意味での異物感。#1と同じくファンキーなブルース・ジャム。御大は独特のギター・フレーズとブルース・ボイスで存在感を示す。
One Bourbon, One Scotch, One Beer
66年にチェスに吹き込んだ曲を、バンド演奏で重心を低く、少しファンキーなブギーにアレンジ。もっと長尺で聴きたい。アルバムタイトル “FREE BEER AND CHICKEN”はこの曲に掛けたのでしょうか。
Homework
重心の低いファンク・ブルース・ジャム。ワー・ワー・ワトソンのファンキーなカッティングは名人芸。さらにド・ファンクに跳ねるベースはクリフォード・コールターのようです。これもコールターでしょうか変なシンセがノイズを発信。御大の自作ですが変な歌詞。
Bluebird
おしゃべりからエレピをバックに御大のタメのきいたブース・ボイスと乱れ弾きギターがうねるスローブルース。後半にホーン陣が出てくるとB.B.キングのようなモダン・ブルースの様相も。
Sitting On Top Of The World
ブルースの古典でハウリン・ウルフやクリームで知られるスロー・ブルース。歌詞に合わせ夏虫が飛ぶ音色のバイオリンをバックに、悲惨な人生を最高の気分と暗く深く沈むブルース・ボイスで唸る。チャカ・ポコと無秩序に鳴るパーカッションは変態的。
(You’ll Never Amount To Anything Of You Don’t Go To) Collage (A Fortuitous Concatenation Of Events)
1. I Know How to Rock
2. Nothin’ But the Best
3. The Scratch” (Joe Cocker)
4. Sally Mae
タイトルの意味する大学に行かなければ自分の潜在能力を十分に発揮できないかもしれないというメッセージは分かりますが、幸運な出来事の連鎖とはなんでしょうか?ジョー・コッカーも塩辛いブルースボイスを聴かせてくれますが、御大将がロックもブルースも俺様がルーツと最後に無双する。
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