「ウェルカム・トゥ・ザ・ネイバーフッド〜地獄からの脱出」は93年の作品。
大ヒットアルバム「地獄のロックライダーII」の続編を早く作りたいミートローフですが、今回は仕事の遅いジム・スタインマンではなくロン・ネヴィソにプロデュースを委ねた作品。ミートローフのアルバムとしては、曲作りに一流のヒットメイカーを揃えているだけにクオリティの高いポップなアルバム。サミー・ヘイガーの提供曲で演奏にも参加をしているだけに、ポップといえどもギターの効いたメロディアスなハードロックになっている。ただしジム・スタインマン作の曲は2曲に留まり、評価は厳しく、セールスも伸びなかった。残念ながら名コンビが産み出してきた作品の水準には達してはいないと思います。

- Where The Rubber Meets The Road
- I’d Lie For You (And That’s The Truth)
- Original Sin
- 45 Seconds Of Ecstasy
- Runnin’ For The Red Light (I Gotta Life)
- Fiesta De Las Almas Perdidas
- Left In The Dark
- Not A Dry Eye In The House
- Amnesty Is Granted
- If This Is The Last Kiss (Let’s Make It Last All Night)
- Martha
- Where Angels Sing
Where The Rubber Meets the Road
路上で恋人がめぐり合う曲と思っていましたが、ラバーが違っていました。ボーイ・ミーツ・ガールの曲であるのは正しいようですが、曲タイトルはここから始まる正念場というイディオムだそうです。ジム・スタインマンのスタイルを期待して聴くと、アルバムのオープニングとしては、インパクトとマジックに欠ける。
I’d Lie For You (And That’s The Truth)
ダイアン・ウォーレン作。ミートローフと女声との軽いデュエットは、抒情的でドラマチック。ドライブの効いた適度にハードなギターとピアノは、耳馴染みがよく心地よいポップロック。シングルカットされアメリカで13位を記録。今聴いても古びれるこのない佳曲だと思います。
Original Sin
ジム・スタインマンの作。ミートローフの歌とコーラスはポップであるが、スタインマンの作だけに演劇調で展開もドラマチック。やはり二人のコラボには何かマジックがあると思います。初出はスタインマンのプロジェクトのバンドラ・ボックスの「オリジナル・シン」
45 Seconds Of Ecstasy
女性シンガーが歌うレゲエ風の間奏曲。
Runnin’ For The Red Light (I Gotta Life)
アルバムの中ではストレートにハードなアメリカンロック。ミートローフは、テッド・ニュージェントのアルバムでも歌っていました。
Fiesta De Las Almas Perdidas
これも間奏曲。フェスティバルぽいサンバ。
Left In The Dark
ジム・スタインマンの作らしくダークで荘厳なバラード。ピアノ曲だけにエルトン・ジョンぽくなるが、舞台のクライマックスに相応しい盛り上がりを聴かせてくれる。スタインマンのソロアルバムでの初演は、しっとりと演出を抑えたいい雰囲気です。これが良いという声も多々あります。
Not A Dry Eye In The House
ダイアン・ウォーレン作。FMフレンドリーなポップな曲ですが、苦みの効いた心の痛みを伴うラブソングであり、女性ボーカルとデュエットで歌われるドラチックな曲。ジム・スタインマンの作風に迫るものがある。シングルはイギリスで7位を記録。
Amnesty Is Granted
「恩赦が与えられる」とは何かカッコいい響きです。サミー・ヘイガーの曲でプロデュースも手掛ける、サミーらしい作風のアメリカン・ロック。サミーに加えE.ストリートバンドのスティーヴ・ヴァン・ザントがギターで参加し、ツインギター体制。どうりでドライブが利いています。何かのサントラで主題歌になってもおかしくないキャッチーで勢いのある曲です。97年に自身のアルバム『マーチング・トゥ』で自演している。
If This Is The Last Kiss (Let’s Make It Last All Night)
ダイアン・ウォーレン作。これもFMフレンドリーでゆったりと抜けの良い曲。タイトルは長いですが素敵なラブソングに違いありません。女性シンガーとのデュエットは心地よく、ハモリやサビのフレーズ、リフレインもカッコよく響く。シンプルなケニー・アロノフのドラムの貢献は大きい。言葉の響きや詞の構成にプロの仕事を感じる完成度。完璧なポップロック故に評価は上がらないのかもしれません。
Martha
敬愛するトム・ウェイツの『クロージング・タイム』で美しい曲をカバー。結ばれない運命だった中年男性の告白と懐古を描いた電話劇。トム・ウェイツ作だけに捻りの効いた設定。
Where Angels Sing
「天使の歌う所」ドラマチックなアルバムのエンディングを飾る、静かなクロージング曲。アルバムのコンセプトがはっきりと分からないのが残念ですが、起承転結の結なのでしょうね。
あとがき
このアルバムのセールスが不振でミートローフはMCAとの契約をなくしたと言われています。過去作にはとても及ばないセールスですが、チャート・アクションだけみたらまずまずの成功作ですよ。スタインマンとミートローフのコラボではないというバイアスだけでセースルに結びつかなかった気がします。ダイアン・ウォーレンの提供した3曲は、ミートローフが歌う事を想定しているので、それは最高の出来になりますよ。ミートローフのファンで未聴の方には是非聴いて頂きたいアルバムです。
コメント