ロン・ウッドが正式参加した1975年夏の北米ツアー、1976年のヨーロッパ・ツアー、1977年トロント、エル・モカンボ・クラブを一つのライブに編集した『Love You Live』は1977年のリリース。500人の観客を招待したエル・モカンボ・クラブでのライブ録音、アンディ・ウォーホルが手掛けたジャケットも大きな話題になりました。純粋なツアーの記録「L.A.フォーラム・ライブ」を聴けば、オーヴァーダブや編集を施した本作「「Love You Live」のエンターテイメント作品としての完成度は高い。

- Intro: Excerpt From ‘Fanfare for the Common Man
- Honky Tonk Women
- If You Can’t Rock Me/Get Off of My Cloud
- Happy
- Hot Stuff
- Star Star
- Tumbling Dice
- Fingerprint File
- You Gotta Move
- You Can’t Always Get What You Want
- Mannish Boy
- Crackin’ Up
- Little Red Rooster
- Around and Around
- It’s Only Rock’n Roll
- Brown Sugar
- Jumpin’ Jack Flash
- Sympathy for the Devil
ELPでお馴染みの#1ファンファーレでライブの始まりを告げ、69年のシングルヒット「ホンキー・トンク・ウィメン」のイントロ・コードが響き渡る。この曲は70年代初頭ジョー・コッカーやハンブル・パイがライブでカバーし、人気を博した曲。本家はその人気ぶりを横目で見てカバーし返したのでしょう。#3のロックンロール・メドレーは原曲のグルーブを少し変え、ビリー・プレストンのソウルフルなコーラス映えるニコイチ。「ハッピー」は短い尺ながらも一本のマイクを挟んでキースとミックがツバキを飛ばしながらデュエットするこの時期ならではの貴重な記録。「ホット・スタッフ」は最新アルバムからのファンクでスタジオ盤のシャープには欠けるが、ライブならではのおおらかでラテンなノリは悪くない。ライブ演奏にイアン・スチュワートのピアノを重ねた「スター・スター」はスタジオ盤よりも野性味を増し、エキサイティングなノリはライブでの盛り上がりも必須の仕上がり。
- Intro: Excerpt From ‘Fanfare for the Common Man
- Honky Tonk Women
- If You Can’t Rock Me/Get Off of My Cloud
- Happy
- Hot Stuff
- Star Star
大ヒット曲#7「ダイスをころがせ」は女性コーラスの代わりにオルガンが加わる演奏。今回気づいたのですがミックは終盤にトゥーツ&メイタルズのヒット曲 ”Sweet and Dandy” のリフレインを口ずさんでいる。原曲のコクには欠けるがライブならではのおおらかなノリは楽しめる。#8「フィンガー・プリント・ファイル」ではスタジオ盤の編成にシフトし、再現に挑むが、編集を施しても大胆な歪みまでは当然望むべくもない。エキセントリックなミックのボーカルは迫るものがある熱演です。#9「ユー・ガッタ・ムーブ」はスタジオ録音の素朴な味わいはとは異なり、黒人サポートメンバーがボーカルに加わる呪術的でアフリカ的な演出。#10「無情の世界」は73年頃のライブでのアレンジと変わりませんが、マーヴィン・ゲイのアルバムでも吹いたサックスのトレバー・ローレンスが参加するブルージーな仕上がり。
- Tumbling Dice
- Fingerprint File
- You Gotta Move
- You Can’t Always Get What You Want

当時バディ・ガイが所有していたシカゴのクラブで1981年にマディ・ウォーターズらと共演した「ライブ・アット・チェーカーボード・ラウンジ」に「ライヴ・アット・エル・モカンボ」も正式に発売されました。カナダの小さなクラブ「エル・モカンボ」ではライブの定番に加え初期に戻ったようなブルースも演奏されている。「ラブ・ユー・ライブ」のC面は偉大なるブルースマンへのトリビュートであり「エル・モカンボ」のダイジェスドなのでした。
ライブアルバムとしての構成上、選曲数には断腸の思いが滲むように思います。マディ・ウォーターズの#1は「チェッカーボードラウンジ」ではミックとマディの掛合いボーカルになりますが、ここではミックの本格的なブルースボーカルが堪能できます。#2はボー・ディドリーの少しラテンな曲をレゲエにしてしまうナイスなアレンジ。#3はデビューアルバムで取り上げたハウリン・ウルフの曲をダブル・スライドで再現。#4も初期に取り上げたチャック・ベリーのロックンロール。この4曲にはストーンズの深い愛情を感じます。
- Mannish Boy
- Crackin’ Up
- Little Red Rooster
- Around and Around

ルーツに敬意を示した小ステージから、メインステージに移り、怒涛の終盤戦とアンコールといった流れ。チャック・ベリー風イントロを加えた#5「イッツ・オンリー・ロックンロール」は前曲からの継承を感じる胸が熱くなる展開。「ブラウン・シュガー」から「ジャンピング・ジャック・フラッシ」、アンコールに至る展開はロックンロールの王者の風格が滲みます。#8「悪魔を憐れむ歌」には「ロックンロール・サーカス」で共演したジェシ・エド・デイヴィスをゲストに迎えたトリプル・ギター編成。打楽器を加えたフルメンバーによるサンバ風の演奏は、日本人の感覚ではお祭り騒ぎの大団円。サティスファクションはないのか?
- It’s Only Rock’n Roll
- Brown Sugar
- Jumpin’ Jack Flash
- Sympathy for the Devil

あとがき
ライブの記録は素材となった「L.A.フォーラム・ライブ」も映像ソフト化され、リマスター音源と共に風船ペニスにミックが跨り歌う「スター・スター」、大所帯での演奏するサンバ風「悪魔を憐れむ歌」を臨場感のある映像でプレイバックすることができる。
75年の “Rip This Joint” “Street Fighting Man” “All Down The Line”等の「Love You Live」に収録されていない曲を聴くにはこのアルバムは欠かせない。
もういちまい、ライブアルバムをやろうとおもいます。
コメント