『山羊の頭のスープ』は1973年に発売されたスタジオアルバム。”Jumping Jack Flash”の頃から付き合いのジャック・ダグラスは、薬中のため、これが最後のプロデュースとなった。バンドはイギリスの法外な税金から逃れるため、主要な録音はジャマイカで敢行された。アルバムの評価は分かれたが前々作から3作連続となるチャート1位を4週にわたり獲得。2000年にはプラチナ・レコードに認定されている。山羊頭鍋は実際にあるジャマイカの郷土料理だそうです。動物愛護団体が叩くのはお門違いですが、気持ちのいい絵面ではありませんね。それにしても変なジャケットです。オカルトや神秘主義への傾倒する直接的な証拠は残っていませんが、ちょっと異色のアルバムです。

- Dancing with Mr. D
- 100 Years Ago
- Coming Down Again
- Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker)
- Angie
- Silver Train
- Hide Your Love
- Winter
- Can You Hear the Music
- Star Star
Dancing with Mr. D
吸血鬼と墓場でダンスですから資料を調べても評判はあまり宜しくない。ダークで怪奇的な雰囲気は後の”Love Is Strong” に繋がるかもしれません。クラビネットが目立つファンク仕様でなければ、もっとブラックサバスな重厚なヘビーメタルにしてくれればよかったのにと思います。2020年のデラックスエディション(D.E.)に収録された歌無し初期バージョンを聴けば、スライドギターがリードするジミー・リード風の普通のブルースジャムでした。
100 Years Ago
シンガーソングライターやエルトン・ジョンの線でしょうか。ノスタルジックでメロディアスなのがストーンズらしくない。後半で突如ファンキーに転調するのも謎。D.E.に収録の初期ピアノバージョンではミックの味わい深いボーカルが聴ける。
Coming Down Again
ドラッグなしではこの曲は作れなかったとキースは言っています。「死ぬほど生きたい」「空腹なのは罪じゃない」「他人のパイは美味しかった」などの英文原詩のフレーズは特に印象的。キース自らボーカルを務めニッキー・ホプキンスのピアノが伴奏するメランコリックで感傷的なバラード。曲の背景にはブライアン・ジョーンズ、アニタ・パレンバーグにキースの関係があるのでしょうか、ライブで演奏されない、封印したい記憶なのかもしれません。
She was dying to survive.
Slipped my tongue in someone else’s pie. Tasting better every time.
Being hungry it aren’t no crime.
Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker)
私服警官が10歳の少年を犯人と誤認し背中から撃ち殺した事件は事実。10歳の少女が麻薬の摂取で裏路地にて死亡はありそうな筋書ですがフィクション。歌詞に登場する「44口径マグナム」は71年の映画「ダーティ・ハリー」で知られるようになりました。多分ミック達も映画に触発され書いたのでしょうね。ブラスやクラビネット、ミック・テイラーのワウギターがファンキーで、ブラックムービーの挿入歌のようです。
Angie
世界中で大ヒット。アコギの響きに感動的なメロディとニッキー・ホプキンスのリリカルなピアノが日本人の琴線に触れる。日本でも沢田研二、西城秀樹さんらがカバーをしています。当時のデビッド・ボウイの奥様アンジーさんについて書かれた曲と私も思っていましたが、キースは93年のインタビューで娘のダンデライオン・アンジェラについて書いた曲だと言っています。
Silver Train
今でも安心して聴けますが、昔愛聴したストーンズらしいブルースロック。ミック・ジャガーのハープにミック・テイラーのスライドが光りますが、正直前作ほどの冴えはありません。この曲のデモを聴いたジョニー・ウィンターが即座にカバーしています。
Hide Your Love
ミックの自らピアノを弾きブルースボーカルを披露する。サウンドの質感は雰囲気たっぷりですが、スタジオジャムを録音したスケッチようです。後年ミックはこの曲を振り返り、捨てるつもりの曲だったと言っている。
Winter
南国ジャマイカで作った曲が「冬」とは。小規模のストリングスも入った美しいバラードですが、ストーンらしいとは思えない。またこのアレンジなのでライブで取り上げることもなかった。控えめにジャガーがギターを弾き、ミック・テイラーがメロディアスなリードを弾く。キースは不参加。
Can You Hear the Music
昔から好きな曲。オリエンタルな雰囲気と笛の音が日本人の琴線に触れると思います。「魔法を信じるかい?」といったセリフも登場する歌詞に合った幻想的な雰囲気。久しぶりに聴いてみると、キースだとは思いますがギターを重ねていて、まるでブライアン・メイのギター・オーケストレーションのようなサンドスケープを作り上げている。これは気付きませんでした。
Star Star
ストーンズの得意とするチャック・ベリー・マナーのロックン・ロール。初期には”Come On” ”Bye Bye Johnny”等をストレートに取り上げていましたが、今回は自作曲をベリー・マナーで挑戦。一丸となったバンドの演奏は素晴らしく、リズムギターもリードギターもイキイキと弾きまくり、ミックのボーカルも抜群のノリを発揮している。ミックとキースの共作ですが、内容は有名人と寝たがる”グルーピー” なので、際どい歌詞にクレームがつくと、キースはすべてミックが書いたと非難をかわしました。
ライブでの人気も高く、75年のライブでは曲の演奏時に巨大なエアペニスが出現し、ミックがまたがって歌うという演出。もっと受け狙いで歌詞の一部、”ジョン・ウエィン”をわざわざ”ジミー・ペイジ”に変えている。アトランティクの社主に歌詞の” Star fucker”は”Star Bucker”に変更させられ、曲タイトルも正式に変更させられた。歌詞には結局検閲が入り、該当箇所にボカシを入れて発売してもヨーロッパでは発売禁止になってしまった。これではオンエアできませんね。
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