- Heart’s Done Time
- Magic Touch
- Rag Doll
- Simoriah
- Dude (Looks Like a Lady)
- St. John
- Hangman Jury
- Girl Keeps Coming Apart
- Angel
- Permanent Vacation
- I’m Down
- The Movie
「パーマネント・ヴァケイション」(87年)は、エアロスミス再結成後2作目のアルバム。このアルバムではボン・ジョヴィの特大ヒットアルバムを手がけたブルース・フェアバーンをプロデュースサーに迎え、全ての曲でバンドメンバーが職業作家と共作するというヒット祈願の人事を尽くしている。アメリカで500万枚以上の売り上げを記録し、イギリスでもシルバーおよびゴールド認定を受け、ロック界のレジェンドとして再び君臨するきっかけとなった作品である。
ビッグなドラムサウンドに空間を埋尽くす音空間設計は80年代風だが、ギターのアンサンブルは緻密でハード。何より洗練された曲作りとアルバムを最後まで聴かせる構成が素晴らしい。クジラの鳴き声のSEからハードな曲、ポップな曲、デルタ・ブルース風もあればジャジーな歌唱もある。激甘バラードで大いに盛り上げ、スチールドラムが楽園に誘う、続くビートルズの曲はパーティ風だ。セリフ入り映画のサントラ風味でエンディング。
これだけヒットしたので「ポップ・メタル化した」「露骨な売れ線狙い」等と揶揄する批評も噴出する。また彼らの本来の姿をとらえてないとの意見もあるが、音作りが当時の80年代風であって「Rocks」「Toys in The Alley」らのヒットアルバムを踏襲した構成は、彼らの本質的な部分を十分にアップデートしている。
1.Heart’s Done Time
クジラの鳴き声のSEには「クジラを守れ」というメッセージが込められているらしい。ワチャワチャとした雄叫びから始まるスティーブン・タイラーのエネルギッシュなボーカルと「Back In The Saddle Again」を彷彿とさせるハードなギターリフは、バンド復活の告げる狼煙であり、過去の傑作アルバムを彷彿とさせる素晴らしいオープニングだ。80年代風のドラムサウンドで全体の輪郭が少しぼやけているが、アルバムへの期待は高まる。“Do Time”というフレーズには、刑期を終えた後の解放感と性的な意味があるようだ。刑期を終えて娑婆に戻り、これから派手に行くぜという宣言かもしれない。
2. Magic Touch
シングルヒットするようなキャッチーさは無いが、きっちり構成されたアンサンブルがエアロスミスらしいハードな曲。故に昔からのエアロファンには好評のようだ。
3. Rag Doll
MTVでヘビーにオンエアーされた特大ヒット曲。「ラグドール」とはボロ切れで作ったお人形のようで、卑猥な意味含むそうだ。(プロモビデオで描いている通りの卑猥さ)キャッチーで少しディスコチックなハードロックは「ロックス」の”Get the Lead Out”をリメイクしたのだろう。ジョー・ペリーお得意のスライドギターもよく滑るし、スティーブンのトーキング調のボーカルにエンディングのスキャットやアドリブ、ピヨピヨしたソプラノサックスも楽しい。
4. Simoriah
しっかりメロディを歌っているのでとてもキャッチー。エアロスミスらしくはないがいい曲。
5. Dude (Looks Like a Lady)
これも特大ヒット曲。エアロスミスのスティーブン・タイラーとジョー・ペリーがバーで見かけた「後姿美人」に声をかけたところ、なんとあのモトリー・クルーのヴィンス・ニールだったというエピソードから着想を得ているようだ。当時のヴィンス・ニールは金髪ストレートのサラサラ髪にプリケツで、後ろ姿だけでは美人と見間違えるほどだったようだ。(笑)。人を後ろ姿だけで美人だとかそうでないとか拙速な判断や過度な期待はしてはいけないという、ありがたい教訓のようなお話。
6. St. John
ジャジーなスティーブンのボーカルがクールでミステリアス。神を称え血まみれの手を剣におくというフレーズのリフレイン。
7. Hangman Jury
スティーブンの声とハーモニカが実に達者なデルタ・ブルース風であり、この演出がアルバムに奥行きを与えている。歌詞は貧困や不正義そして復讐をテーマにした物語性のある内容。曲中で主人公が自分の罪を告白し、最終的に絞首刑に処されるといういかにもブルースなストーリー。このような深いテーマとブルースの要素が組み合わさることで、アルバム全体に豊かな表現力と感情の深みをもたらしている。
8. Girl Keeps Coming Apart
内側から破裂しそうなくらい危険でセクシーな、職業不詳の怪しい女性について歌っている。スティーブン・タイラーのボーカルもハーモニカもバタバタして狂乱気味。ギターソロもいい感じで、ホーン隊も要所で盛り上げる。曲に深みや含蓄はあまりないものの、アルバムの終盤を盛り上げる楽しい曲である。コマーシャルな要素には欠けるが、その分純粋に楽しめるエネルギッシュな曲になっている。
9. Angel
激甘パワーバラードのヒット曲。この曲はファーストアルバム『野獣生誕』に収録された初のシングル曲「Dream On」の系譜に位置づけられ、「アルマゲドン」のサウンドトラックに収録された「I Don’t Want to Miss a Thing」など、後のヒット曲のひな型となった成功事例と言える。曲は激甘すぎるかもしれないが、メロディと感情豊かなスティーブンの歌が愛しい。
10. Permanent Vacation
ビル・ブラットフォードとステーブンの共作。イントロのじらしもスチールドラムも南国リゾート風で楽しい。永遠の休暇だしね。アルバムのタイトル曲だしポップで大好きな曲。
11. I’m Down
ビートルズのポールが歌ったシングルB面曲のカバー。パーティぽい感じに仕上げているがほぼストレートな演奏。ヤードバーズの「Train Kept A-Rollin’」「Think about it」等の英国ロックの曲をアルバムに収めるいつものお約束。
12. The Movie
インスト。日本人女性の声がサンプリングされている。David Bowieの「It’s No Game (Part 1)」の日本語のナレーションを思い出した。
アウトテイク等はほぼ次作「PUMP」や他のアルバムで再利用されているのだろうけどデラックスエディションは欲しいね。プロデューサーのブルース・フェアバーンもイエスの「ラダー」制作後99年に亡くなっているのでお金が絡むのかな。
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