ロイ・エアーズさんが25年3月4日にお亡くなりになりました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
彼が60~70年代にポリドールに残した曲をまとめたコンピレーション・アルバムを手掛かりに、ロイ・エアーズのアルバムを聴くようになりました。「He’s Coming/Roy Ayers Ubiquity」はジャズ・ファンクとソウルを融合させた最高にクールな72年の作品です。

- He’s a Superstar
- He Ain’t Heavy He’s My Brother
- Ain’t Got Time
- I Don’t Know How to Love Him
- He’s Coming
- We Live in Brooklyn Baby
- Sweet Butterfly of Love
- Sweet Tears
- Fire Weaver
アルバムのメッセージは70年代ソウルと連動するようにシリアスかつ友愛の精神を説くもののようだ。タイトルは「神の降臨」を意味しますが、このアルバムへの影響としては70年初演のミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター」と71年のブラック・エクスプロージョン映画「シャフト」が挙げられると思います。
He’s a Superstar
ワウギターとビリー・コブハムの細かいハイハットが、何かの訪れを促すように何やら緊張を高める。シンプルなベースのオスティナートにエレピ、女性コーラス、リーダーによる同胞に向けた預言のメッセージは70年代初期のアメリカの世相を反映した熱いアジテーション。この時代ならではの最高にクールで熱いジャズ・ファンク。
He Ain’t Heavy He’s My Brother
当時のアメリカにおける社会的・政治的な分断を乗り越えるための希望と連帯を象徴する曲。69年にホリーズによって世界的にヒットしたが、ダニー・ハサウエィやアル・グリーンもカバーしている名曲。このアルバムではリーダーのビブラフォンが歌い、最高にメロウで癒しを感じる素晴らしい名演。
Ain’t Got Time
全篇クールな演奏にリーダーによる「今がその時だ、疲れてる暇などない」とかなりニュー・ソウルなメッセージ?いやアジテーションがのる。
I Don’t Know How to Love Him
ミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター」からの曲で、オリジナルはイヴォンヌ・エリマン(後エリック・クラプトンのバンド)が歌っている。ここではリーダーによるヴィブラフォンが点描を打つようにメロディーを奏でるメロウなインストに仕上げている。
He’s Coming
アルバムのタイトル曲ですが、ここまでのシリアスな雰囲気から一転し、明るくハッピーな印象を受ける。スタイル的にはオルガンとヴィブラフォンのからみが60年代ソウルジャズの雰囲気。終盤のソプラノ・サックスはマイルスの「アガルタ」「パンゲア」に参加したソニー・フォーチュン。
We Live in Brooklyn Baby
ヒップ・ホップのサンプリング・ネタで有名ですが、タイトル・フレーズとストリングスのリフレインがスリリングで緊張感のある傑作ジャズ・ファンク。歌詞は語呂合わせかもしれませんが同胞への決起を促すメッセージ。マイルス・デイビスのバンド出身のロン・カーターがベースを弾いている。
Sweet Butterfly of Love
メロウな女性ボーカル曲。
Sweet Tears
今度はリズムも加わり、リーダーの本格的な歌物メロウ・グルーヴ。スリングも演奏もそこそこエネルギッシュに盛り上げるがリーダーの歌とソロをとるヴィブラフォンはクールです。
Fire Weaver
最後はリーダーによるクールなヴィブラフォンが独壇場のジャズ・ファンク。
私はロイ・エアーズの良いとこ取りをしたコンピを一番愛聴していますが、アルバムでは本作「He’s Coming」と「Stoned Soul Picnic」が好きで今でもよく聴きくアルバムです。70年代の「シャフト」に代表されるブラック・シネマのサントラ、マーヴィン・ゲイやスティービー・ワンダーらによるニュー・ソウル、ノーマン・ホイットフィールドが手掛けたザ・テンプテーションズに代表されるサイケデリックでファンキーなインストを聴いていた私の好みにに、ロイ・エアーズによるジャズ・ファンクがピタリとはまったのを思い出します。
同胞へ向けたアジりがきついので一部の方には敬遠されるでしょうが、サウンド志向で英語の意味を気にしない私のような輩には丁度いいジャズ・ファンクです。
それにしてもCDの中古販売価格上がりすぎですよ!
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