New York Dolls

NewYorkDolls ROCK

ニューヨーク・ドールズのフロントマン、デヴィッド・ヨハンセンが 2025年2月28日に75歳で亡くなった。心よりご冥福をお祈りいたします。デビッド・ジョハンセンとしては生涯現役だったのでしょうが、晩年、家族が闘病治療費の寄付を呼びかける様子は、ロック史に残るバンドの最後の生き残りとしては不遇すぎると思います。だってニューヨーク・ドールズのリーダーでメイン・ソングライターですよ。

  1. Personality Crisis
  2. Looking for a Kiss
  3. Vietnamese Baby
  4. Lonely Planet Boy
  5. Frankenstein
  6. Trash
  7. Bad Girl
  8. Subway Train
  9. Pills
  10. Private World
  11. Jet Boy
Early 80s in NY with Keith Richards

バスター・ポインディクスターとしての活躍はリアルタイムで見たし、ニューヨークのクラブでキース・リチャードとステージで共演する写真も印象深かった。ロックの殿堂入りはならないかもしれませんが、彼らのアルバムは「オールド・レコーズ・ネバー・ダイ」 by Ian Hunter。古いレコードと思われるのは本望ではないでしょが、いつ見ても彼らのアルバムはギラギラしたいかがわしさを放って色褪せない。

ニューヨーク・ドールズのファースト・アルバムは1973年のリリース。
音楽的には、英国ロックの影響を受けたソリッドなツイン・ギターが自由にリフ、リードやオブリガートを繰り出すローリング・ストーンズの直系。メンバーの宣伝写真も「ローリング・ストーンズに対するアメリカ版パロディ」と揶揄されるのも納得です。しかしデヴィッド・ヨハンセン、ジョニー・サンダース、シルベインらのメンバーによる自作曲は、ストレートなハードロックから、ミディアム、アコースティクなスローまで、キャッチーなフックやメロディのあるクオリティの高いもの。本作は一部演奏にも参加したトッド・ラングレンのプロのお仕事として、バンドの勢いをパックした録音技術とプロデュース力、女装したメンバーとピンクのリップスティックが彩るジャケットの毒々しい芸術的な美しさを含め、ロック史を飾る徒花的なアルバム。ザ・スミスのモリッシーがドールズのファン・クラブの会長だったこと、ブロンディのデボラ・ハリーが彼らの追っかけだったのは有名な話だ。

Personality Crisis
パンクの先駆に位置づけられるエポックメイキングな楽曲で、バンドの代表曲。ローリング・ストーン誌が選ぶ“最も偉大な500曲”では第271位にランクインしているそうだ。ジョハンセンとサンダースの共作。トッドもピアノで演奏に参加している。ローリング・ストーンズの”ROCKS OFF”辺りを下敷きにした、ロックンロールの伝統に則ったスタイル。ギターによるイントロとボーカルの雄叫びが狂乱の幕開けを告げる。音だけを聴いても素晴らしいが、You tubeでバンドの演奏を見た方が100倍楽しめる。

Looking for a Kiss
デヴィッド・ヨハンセンの単独作。女装のキワモノが、キスを探してなんて。グラマラスでキャッチーなメロディがいい感じだが、音はヘビーなのに印象はチープ。最後のキスの音がおどろしい。これも一種のエンターテイメントですね。

Vietnamese Baby
デヴィッド・ヨハンセンの単独作。スリージーなギターの絡みがカッコいいハード・ロックだが、全体的な印象は不穏で不気味。タイトル通りベトナム戦争をテーマにした曲で、マスタードガスにベトナム・ベイビーなんて怖すぎる。

Lonely Planet Boy
一生懸命歌詞を読んでも意味は分からないが、「孤独な地球の男の子」なんてタイトルが素敵。メランコリックなバラードで変なサックスがいい味を出している。デヴィッド・ヨハンセンの単独作で、稀代の名曲ではないだろうが、割と前からお気に入りの曲。70年頃活躍したデビッド・ボウイになりたかった男、ジョブライアスの最近のコンピアルバムのタイトルが「Lonely Planet Boy」でした。

Frankenstein
デヴィッド・ヨハンセンとシルベインの共作。エドガー・ウインターのインスト同名曲と何か関連はあるのだろうか。アルバムの中ではギターのヘビーな曲。

Trash
デヴィッド・ヨハンセンとシベインの共作。”Personality Crisis“のB面シングルとしてもリリースされた。パンキッシュなバンドの演奏に、ヨハンセンのテンションの高いボーカルと騒々しいコーラスのリフレインが面白い。エンディングの効果も凝っている。60年代のザ・フーのヒットシングルと同様に、コンパクトでポップ、かつエネルギッシュな勢い感じさせてくれる。

Bad Girl
BMPの早いパンキッシュな曲。

Subway Train
ジョハンセンとサンダースの共作。ニューヨークの地下鉄が舞台のようだが歌詞を読んでも意味不明。ミディアム・テンポで安心して聴いていられる心地のよい曲。共作者ジョニー・サンダースも自身のアルバム『So Alone』(1978)で歌っている。なよなよしたジョニーの歌もらしくていい。

Pills
ボー・ディドリーのカバー。いわゆるボーのジャンビートではなく、ズンドコしたビート。ドールズらしいパンキッシュなアレンジがいい。サビのリフレインがクセになる曲。

Private World
イントロでキングストン・トリオのルイ・ルイの替え歌かと思ったけど勘違いか?アメリカの誇るガレージ・ロックの基本ですしね。

Jet Boy
アルバムのラストを飾るこの曲も、BMPの早いパンキッシュというよりハードなロック。転調後のギターの間奏が不思議だ。ロックン・ロールの伝統。でもやはりパンクかな。いやガンズ&ローゼスだ。

あとがき
RCサクセションの「カバーズ」で、ジョニー・サンダースが ”Eve of Destruction” と”Secret Agent Man”で客演したのを機に、ジョニーのソロとニューヨーク・ドールズのアルバムを聴き始めたと思います。

シングル”Personality Crisis“は、ベスト40が最高位で、発売当初はさほど話題にならなかったようですが、確実にバッドボーイズ・ロックの源流のひとつ。SEX PISTLESらのパンク勢はもとより、ハノイ・ロックスにマイケル・モンロー、LAメタル、モトリー・クルーやガンズ&ローゼスらへの影響は計り知れない。

デビュー同世代のエアロスミスや結成時に参考にしたというKISSが、ビジネスで成功を納め、健康など金で買えるロックセレブな彼らと、ニューヨーク・ドールズ及びデヴィッド・ヨハンセンの晩年の境遇が不憫でならない。ジョニーやケインらのオリジナルメンバーが、アル中やジャンキーでなければその後があったのにと思いますが、そういう世界線は決してなかったのでしょう。短い活動期間にバンドのエネルギーが凝縮され、記録として2枚のアルバムが残せたこと。結果的にそれがロック史に名を残すことになっただけのこと。

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