OASIS [Definitely Maybe]

OASIS [Definitely Maybe] ROCK
OASIS [Definitely Maybe]
Definitely Maybe – 衝撃のデビュー
  1. Rock ‘n’ Roll Star
  2. Shakermaker
  3. Live Forever
  4. Up in the Sky
  5. Columbia
  6. Supersonic
  7. Bring It On Down
  8. Cigarettes & Alcohol
  9. Digsy’s Dinner
  10. Slide Away
  11. Married with Children

インディレーベルCreation Recordsから1994年にリリースされたデビュー作。収録された楽曲のクオリティーと、メンバーの奔放な言動などで発売前からメディアの注目を集めていたこともあり、デビュー・アルバムでありながら全英アルバムチャートで1位を獲得。

久しぶりにアルバム情報や歌詞を眺めながら聴いてみました。ギャラガー兄弟の労働者階級出身者としての背景が、当時の社会の閉塞感や階級社会への怒りを歌詞やサウンドに反映させているようだ。英国でNo.1という成績も納得。

私も当時、ラジオで流れた”Rock’n’Roll Star”を聴いた記憶があります。発売直後に手にした本作「Definitely Maybe」は、厚いギター・サウンドと、ビートルズ風のメロディやフレーズに、生意気さと気丈な歌詞が融合した彼らの登場は、私にも次世代の英国ロックの潮流を感じさせるものでした。

Rock’n’roll Star
ノエルが「言いたい事は全てこの曲に書いた」と述べたように、オアシスの原点がこの一曲にある。歌詞の一節「I live my life for the stars that shine」は、輝く星になるように人生を生きるという、普遍的な夢や希望に向かって生きる姿勢を示している。直接的にロックンロールスターになりたいとは言っていませんね。「Tonight I’m a Rock ‘n’ Roll Star」とサビでリフレインしますが、頭の中では俺の夢はリアルと前置きがあるので、想像の世界で「今夜自分はロック・スター」と述べているこになる。ビッグマウスと揶揄されることもありますが、むしろ理想と現実のギャップを冷めた視点で捉える批評の精神と諦観を感じることができる。彼らは、デビュー前のステージで2人の観客の前で当曲を披露し、翌日散々な批判を浴びせた奴やらと大喧嘩をしたらしい。そんなエピソードからビッグマウスと揶揄されたのでしょうね。

曲としては、デビューアルバムの幕開けに相応しい、ストレートでハッタリの効いたロックンロール。フェイセズやロニー・ウッド風のスライドギターが全体に響き、キャッチーなメロディとギターリフはグラム風。アウトロの「Rock ‘n’ Roll」のリフレインは、ストーンズの「It’s Only Rock ‘n Roll」のオマージュのように聴こえる。両曲には、ロック・スターの魅力と虚像、憧れと現実の違いはあるものの、ロックスターへの複雑な感情が共通しているように思えます。

私は今まで、タイトル「Rock ‘n’ Roll Star」が新人にしては大言壮語だと思っていましたが、歌詞に繊細な夢見る青年の面影が含まれていることに気づき、少し彼らのイメージを改めることになりました。

Shakermaker
ノエルはインタビューでビートルズの「フライング」からの影響と言っているが、私は「俺はセイウチ」だと思います。どちらにせよ、まさにサイケデリック期のビートルズ。分厚いギター・オーケストレーション?に歌メロは親しみやすい。

Live Forever
ギャラガー兄弟の母親について「生きること」を肯定的にとらえたポジティブな曲。ニルヴァーナの『イン・ユーテロ』の仮タイトル”I Hate Myself and I Want to Die”(自分が嫌いだし死にたい)への反発の意味が込められているらしい。お母さん思いの兄弟ですね。

Up in the Sky
メロディもタイトルもいい。カラッとしてアメリカで多少受けたのも納得。だが歌われるのは、ちょっとばかり自分よりましな人生を送る奴らに向けた悪口。上から転落する奴らに「俺の世界へようこそ」ですって。下から目線の陰キャラが全開している。ギャラガー兄弟の原点ですね。曲としてはグラムロックの影響があると思う。”Hey, you”という節の出だしは、ジギー期のデビッド・ボウイの「サフラジェント・シティ」を想起するし、”How does it feel…”もロックの常套句でしょう。

Columbia
ちょっと苦手なダンスビートの曲。クーラ・シェイカー、プライマル・スクリーム辺りは好きなんですがね。

Supersonic
薬でぶっとんだ、最高の状態を指すようです。Queenの曲「Don’t Stop Me Now」のサビでも”Supersonic”という単語が登場するが、共に「超音速」を意味していないので、何となく同じような状態を意味すると思います。オアシス流の「セックス・ドラッグ・ロックンロール」ソング。デビューシングルで、これこそ後期ビートルズのサイケデリック・サウンドですね。

Bring It on Down
今度は下層のくせに上から目線で、もっと下層の奴らをなじる。ここでも陰キャラ全開。ロック的な破壊衝動を表現するアルバム最速BPM。トライバルなドラムにハードなギターは中々エキサイティング。間奏も頑張っている。

Cigarettes & Alcohol
T. レックス『ゲット・イット・オン』のリフを借用した、ザ・フーやローリング・ストーンズ、デビッド・ボウイ好きには一番しっくりくる曲。影響を受けたアーティストの曲から、歌詞やタイトル、メロディや楽器フレーズを拝借するのが多い中で、そのパクリの代表的ともされる名曲。歌詞の内容は、イギリスの労働者階級出身者として働き、生きていく中で、仕事や生きる価値、自力で成り上がる必要性を歌っている。単にタバコや酒を賞賛している内容ではない。

Digsy’s Dinner
アルバムの中では明るいポップス。シンプルなアレンジならもっと好きになれるのに、私には少しギターのアレンジがハードすぎる。

Slide Away
いいメロディ。タイトルの解釈次第で、彼女との別れか、共になのか釈然としない。ポジティブなラブソングだと思います。終盤のクラッシュシンバルの音が気持ちいい。

Married with Children
アコースティック・ギターの弾き語り。デモ録音かもと思いましたが、実際リアムのコメントを読むとベッドの上での録音のようだ。

あとがき
私としては、ロック=エンターテインメントなので、アメリカのトラック・ドライバーが長距離ドライブのお供に聴くアルバム、つまりエキサイティングでカラッと疾走感があり、メロディの起伏に富んだ分かりやすいサウンドが好み。正直、OASISのヘビーなギター、湿った音作りに馴染めないところがあります。

2012年に発売のCD三枚組の拡張版でボーナス曲として収録された、ライブやノエルによる歌バージョン、弾き語りに近いデモ、オリジナルアルバムの収録から漏れた曲などが、曲の良さが伝わるシンプルなアレンジで多数収録されていたおり、私の不満はあらかた解消されてしまった。

2002年にSONYのウォークマンのCMで流れた”Don’t Looking back in Anger”と同年のシングル”Songbird”あたりからメロディのきれいな曲を聴き始めたので、今でも好きなのはベスト盤「ストップ・ザ・クロックス」。スレイドのカバー「カモン・フィール・ノイズ」なんかを楽しく聴くような薄っぺらなリスナーですからね。

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