JASON & THE SCORCHERS [Thunder & Fire]

Thunder & Fire ROCK
  1. When The Angels Cry
  2. Now That You’re Mine
  3. You Gotta Way With Me
  4. My Kingdom For A Car
  5. Close Up The Road
  6. Lights Out
  7. Find You
  8. Bible And A Gun
  9. Six Feet Underground
  10. No Turning Back
  11. Away From You

ナッシュヴィル出身ジェイソン&ザ・スコーチャーズの89年のアルバム。
先の尖ったブーツに細身のレザーパンツ。ストリート感のあるジャケットがなんかカッコいい。でも裏返すと、テンガロンハットのカントリー野郎が、LAメタルなメンバーを従える構図に何か違和感を覚える。雑誌等では「カウパンク」(カウボーイパンク)と紹介されていたと思います。いくつかの曲では、ドブロ、マンドリン、スライドギターを使用し、それらしいカントリー・スタイルも聴かせてくれますが、適度にメロディアスで、ハードに突っ走るパンキッシュな曲が聴きものです。

プロデューサーは、カントリーもソウル知り尽くした、マスル・ショールズスタジオのバリー・ビケットさん。ライブ感あふれるストレートなロックン・ロールを目指したようですが、ハードロックとパンクにカントリーの掛け合わせのバンドには、ちょっとミスマッチだったかもしれませんね。いっそプロデュースはボブ・ロックに任せてLA録音、シンデレラの「ハートブレイク・ステーション」(90年)の路線で、カントリーとハードロックの高度な相互互換を試みるのもよかったかもしれませね。まあ私見ですがね。

何故か分かりませんが、私は発売当時に買い、今でもお気に入りの1枚。今でも手元に置いておきたいバンドの作品です。いくつかお気に入りの曲を紹介させていただきます。

When The Angels Cry
いつ聴いても若さが漲る80年代ロックの傑作です。ギターが爪弾くイントロで心を引き込まれ、厚めのコードギターのリフが引っ張る展開は、まさにメロディアスなハードロック。私としては、サミー・ヘイガーが加入したヴァン・ヘイレンを多少意識しているのではないかと思います。アルバムを通してリーダーのジェイソンの独壇場ですが、カントリーを歌えばしっくりくる声を、パンキッシュな曲にも上手くのせています。リーダーのメロディアスな作曲センスは全篇で発揮されており、この曲はカントリー界のヒットメイカーとの共作で万全を期しましたが、シングルはチャートインせず不発に終わりました。残念。日本には結構この曲が好きな私のようなリスナーは多いと思います。今でも現役でライブこの曲を演奏する姿をYou tubeで見れるのがうれしい。

My Kingdom For A Car
60年代にボブ・ディランと共にニューヨークで活躍したフィル・オクスの1970年の作品。タイトルはシェイクスピア「リチャード三世」セリフ、「馬をくれ!この王国と引き換えに!」(A horse! My kingdom for a horse!)をもじったもの。車は車以上の価値全てを注ぐ価値のある存在という事ですね。当時まだ運転免許を持っていない高校生は、車への憧れが強かったのでしょうか、何か共感したのだと思います。まあ当時の私には、そんな歌詞の意味等知る由もなく、ハード・ドライブなギターで疾走する曲調が真っ先に気に入りました。今でもドライブ時には持っていきたいリストの筆頭です。後にフィル・オクスの原曲も聴きましたが、ちゃかぽこしたロックンロールのある意味これも傑作でした。当時は「DRIVE」と付くルースターズの”Drive all Night”、尾崎豊の”Driving All Night”等の疾走感のある爽快な曲をよく聴いていたのを思い出します。ミズノのTVCFで使われたWANDSの”Jumpin’ Jack Boy”もよかったなぁ。

Bible And A Gun
スティーブ・アールとの共作。「宗教とピストル」というアメリカ社会を二分するテーマを持ってきましたね。曲自体はこのアルバムに数曲あるカントリーロック。

Away From You
最終曲は、サザン・ロック王道のロックン・ロール大会。レナード・スキナードが、J.Jケールの”Call Me The Breeze”をカバーするノリを思い出しました。ライブなら大団円。

私の現在の感想としてはプロデューサーがエレピやオルガンでもっと演奏に参加し、曲のクオリティにコミットしていれば、普通に評価を得られるアルバムになったのではと思います。オルタナ・カントリーやアメリカーナというサブジャンルが注目されるのはもう少し後で、その先駆けとなる可能性は十分あったのではと思います。時代も89年では、LAメタルでは、モトリー・クルーの”Kickstart My Heart”、ガンズ&ローゼスの”Paradise City”にポイズン辺りがヒット。ハードロックも新しい時代に突入し、グランジもそこまできてますからね。POPチャートはジャネット・ジャクソンやアニタ・ベイカー。シンプルなルーツ・ロックには、いい時期ではなかったですね。

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