ボン・スコットは泥酔し吐瀉物を喉に詰まらせ80年にロンドンにて死去。後任のブライアン・ジョンソンをボーカルに据えた同年の「バック・イン・ブラック」は傑作だが、以降ちょっとした低迷期があった。88年に発売された本作「ブロウ・アップ・ユア・ヴィデオ」は、実兄ジョージ・ヤングにプロデュースを委ね、バンドはシンプルなロックに回帰する。
- Heatseeker
- That’s the Way I Wanna Rock ‘n’ Roll
- Meanstreak
- Go Zone
- Kissin’ Dynamite
- Nick of Time
- Some Sin for Nuthin
- Ruff Stuff
- Two’s Up
- This Means War
Heatseeker
80年後半のLAメタル全盛期に、突如風穴を開けたハードなロックンロール。飾り気のないゴツゴツした王道のロックは、個人的にAC/DCの曲ではTOP3に入るお気に入りの曲。
ギターの音合わせのようなウォーム・アップから、ラフなカウントを合図に、ギターリフがユニゾンで突入する。ブライアンのボーカルは金切り声なのに耳馴染みがよく、サイモン・ライトのドラムがゴツゴツとボトムを突き上げ、徐々にバンドの推力を上げていく。曲単体でもエキサイティングでノリの良い曲ですが、プロモビデオで鑑賞すると楽しさ倍増。MTV向けに制作されたプロモビデオは、当時のチープなCGを合わせたコミカルな展開で今見ても十分楽しめる。
アンガスが、帽子を引っかけたのは、何故か偶然ミサイルの発射レバー。世界各地を熱探査ミサイルが飛び回り、最後オーストラリアのオペラハウスに突き刺さる。アンガスのスクールボーイのコスプレ、ドラムスのサイモンの飾り気のないポロシャツ、ブライアンの鳥打帽にシャツはジーンズにタックインが定番だ。その普通なダサさ加減が最高にカッコいい。
That’s the Way I Wanna Rock ‘N’ Roll。
タイトルからして 50年代のロックンロールへのオマージュ。サイモンによるドラムのノリが最高にパワフル。これもAC/DCのライブの定番曲となり親しまれている。
Meanstreak
チェンジ・オブ・ペースでミッドテンポのグルーヴ。レッド・ゼッペリンン、エアロスミスにも通じる白人によるファンクロックだが、AC/DCらしく更に重くヘビーなノリ。
Go Zone
これもミッドテンポのグルーヴだがちょっとキャッチーでメロディアス。ギターの響きがいい。
Kissin’ Dynamite
ブルージーに始まるスローかと思えばいつものミッドテンポ。ダイナマイトにキスとは。エネルギッシュでハードだが、コミカルさも忘れない。
Nick of Time
イントロもサビのフレーズもメロディアスでギターソロも構成が練られている。ヒット狙いなのか曲の高いポテンシャルを感じる。このキャッチーさは、サミー・ヘイガーの曲のようだが、ブライアンが歌えばすべてAC/DCになる。LAメタルの若手バンドが束でかかっても太刀打ちできない、80年代ならではのAC/DC流メロディアスハード。
Some Sin for Nuthin
ダークで重厚。
Ruff Stuff
メロディアスで構成もしっかりしたヒット狙いのような曲のように思える。これもサミー期のヴァン・ヘイレンのようだが、こちらもブライアンが歌えばすべてAC/DC。
Two’s Up
シリアスなムードが漂い、アンガスのギターソロも気持ち少しクール。しかし最後はいつものぎゃんぎゃんした感じでまとまる。
This Means War
サイモン・ラッドのドラムのノリを活かす、アルバムのクロージングで攻撃的なシャッフル。これもブルースロックやロックンロールの伝統を強く感じさせる。この曲が好きになれるならモーター・ヘッドも好きになれる。
あとがき
本格的なビジネス的成功は次作に譲るとして、本作はファンの求めるバンドの普遍的な音楽スタイルを作り上げた最初の成果でしょう。私もがっちり取り込まれたようです。40年近く聴き続けた、改めての感想は、ロックファンでAC/DCのファンで本当に良かったという感謝しかありません。
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