ジョージア・サテライツが「Keep Your Hands to Yourself」でデビューした1986年は、プリンスの「KISS」、ライオネル・リッチーの「Say You, Say Me」、映画「トップガン」の主題歌、そしてマドンナやホイットニー・ヒューストンがMTVを賑わせていた。そんな中「ベストヒットUSA」のDJ小林克也さんが「ジョージア州アトランタから突如登場しました」と紹介した彼らのデビュー・シングルの衝撃を忘れられない。
- Keep Your Hands to Yourself
- Railroad Steel
- Battleship Chains
- Red Light
- The Myth of Love
- Can’t Stand the Pain
- Golden Light
- Over and Over
- Nights of Mystery
- Every Picture Tells a Story
- I’m Waiting for the Man
- The Myth of Love (Live)
- Hard Luck Boy
- Red Light (Live)
- No Money Down (Live)
- Battleship Chains (Remix)
当時の音楽シーンでは珍しい豪快なギターロックのカッコよさに惚れて、初来日の渋谷公会堂に予備校の友人3人と足を運びました。あまりの爆音で耳がおかしくなった事を思い出します。彼らの音楽的背景としてAC/DCやフェイセズ、CCRなどを引き合いに出されますが、ストーンズやビートルズ、後にはABBAまでカバーするバーバンド的な選曲で明らかなように、ルーツ・ロックにポップスまで幅広い音楽を吸収したギターバンドです。

それとこのアルバム・ジャケットのカッコよさですよ。ローリング・ストーンズの「デッセンバーズ・チルドレン」へのオマージュですよね。『ディッセンバーズ・チルドレン』(December’s Children)1965年に発売されたローリング・ストーンズによる米国における5作目のオリジナル・アルバム。
Keep Your Hands to Yourself
87年のデビューシングル。当時の華やかな音楽シーンで、米ビルボードに2位に堂々ランクイン。バンドの代表曲となりました。(因みにトップを阻んだのはボン・ジョヴィの””Livin’ on a Prayer”)
プロモビデオは、ダン・ベアードが演じる田舎の結婚式を舞台にしたドラマ仕立て。バンドは走るトラックの荷台で演奏をしている。(これはAC/DCのオマージュですね)イントロのゆったりと大振りなエレキのコード・ストロークに続き、カントリー風情の男がこぶしを利かせ、声をひっくり返してさびを歌う。豪快なルーツ・ロックですが、実際には毎晩田舎のバーで酔っ払いを相手に演奏しているバンドが、上京し1曲披露するような感じ。今聴いても風変わりで時代の悪戯のような曲ですが、アメリカにこの様な曲を支持するマーケットが存在することに、今更ながら懐の広さに感動を覚えます。
Railroad Steel
一番好きな曲かもしれない。少なくともいまだに聴きたくなる。80年代風ビッグなドラムもここでは良い。2本のギターが左右でザクザクとリズムを刻むサイテラツ流ロックンロール。こんなギターロックが聴きたかったんだよと思わずにいられない。脱退したダン・ベアードがライブで演奏しているバージョンも同アレンジで演奏され、素晴らしい出来。イントロのギター・フレーズ、間奏やブレイク、終盤の構成まで全てが素晴らしい。ダン・ベアードとリック・リチャーズらのサビのハモリもカッコいい。
Battleship Chains
ギターのリック・リチャーズが歌う。後にG&Rを脱退したイジー・スタッドリンと合流する彼もいい声をしている。来日公演でも披露され受けまくっていた。私もさびを合唱してたと思う。シンプルながら豪快でキャッチーな曲。
Red Light
ダン・ベアードがメインボーカル。左右に分かれたギターがグリグリくるジョージア・サイテラツ流ロックンロール。
The Myth of Love
ダン・ベアードがメインボーカル。緩急をつけた展開が面白いが、これもサテライツ流のゴリゴリなロックです。
Can’t Stand the Pain
一瞬「ハッピー」が始まるのかと勘違いをしてしまう。リック・リチャーズがリード・ボーカルを務め、得意のスライド・ギターが全篇で宙を舞う。ミック・テイラー在籍時のストーンズの曲を聴いているようだ。終盤リックのスライドソロは狂おしいまでの名演。いい曲です。
Golden Light
キャッチーなメロディが反復するミディアムバラード。落ち着いたダン・ベアードの声もしゃがれたリックのハモリもここではエコーばっちりで雰囲気たっぷり。
Over and Over
やはりロン・ウッドやフェイセズを想起せずにはいられない70年代ロックスタイルが嬉しいジョージア・サイテラツ流ロックンロール。ちょっとアマチュアさも漂う。
Nights of Mystery
ダン・ベアードが感情豊かに歌う。ストーンズの「無常の世界」辺りを狙ったのかアコースティックギターを絡めたロックするバラード。この曲を余韻に次曲が始まる。
Every Picture Tells a Story
ロッド・スチュワートのソロアルバムのタイトル曲。ロッドとロニー・ウッドが作曲している。ボーカルはリック・リチャーズ。長尺なストーリーをロッド・スチュワート程の味わいには欠けるが、中々の熱唱で最後まで聴かせてくれる。さすがに来日公演では演奏されなかったはず。

Gジャンにコンバースのダンとマウロに、ダブルのライダースにサングラス着用のダブルのリック。リック・リチャーズに至ってはジョン・ベルーシ のような容貌でヘビメタ野郎とカントリー野郎が同居している。私当時はヘビメタは不良の聴くものだと思っていたので、ダン・ベアードの真似をしてカッコはGジャンにコンバースとTシャツでしたね。
リマスターされたタイミングで、ミニアルバムとして発売された曲がボーナス収録されている。ヴェルベット・アンダーグランドの「I’m Waiting for the Man」、チャック・ベリーの「No Money Down」カバー曲が聴きもの。
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