Donald Byrd [Ethiopian Knights]

Donald Byrd Ethiopian Knight JAZZ

「エチオピアン・ナイト」は1971年にブルーノートから発売された19枚目のアルバム。それまでソウルやゴスペル音楽のプロデューサーとして活躍していたジョージ・バトラーがプロデュースを務め、1971年8月にロサンゼルスのA&Mスタジオで2日間に渡って録音されている。本作においてハード・バップ・トランペッターからジャズ・ファンク先駆者への完全転向を告げたアルバムとなった。

次作「ブラック・バード」(73年)ではマイゼル兄弟にプロデュースを委ね、より洗練されたジャズ・ファンクで大きな商業的成功を納めます。本作は過渡期の作品とされますが、ダークでミステリアス、緻密で構築的なジャズは、ここでしか聴けない素晴らしい音。同時期のアーティストと比較しても先進的なジャズ・ファンクであり、プレフュージョンと呼んで差支えのない稀有な作品。加えると、本作における非ジャズ的なベースとドラムにワウギターのカッティングで構成されるアンサンブルにソロを展開する構造は、マイルス・デイビスの「アガルタ」「パンゲア」に少なからず影響を与えていると思います。

Donald Byrd Ethiopian Knight
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ミステリアスなドナルド・バードの肖像とサウンドが見事に一致した、黄金期ブルーノート4000番台を飾る素晴らしい作品です。

1. The Emperor – 15:14
2. Jamie – 3:38
3. The Little Rasti – 17:41

Donald Byrd – trumpet
Thurman Green – trombone
Harold Land – tenor saxophone
Bobby Hutcherson – vibes
Joe Sample – organ
Bill Henderson III – electric piano
Don Peake – guitar
Greg Poree – guitar (tracks 1 & 2)
David T. Walker – guitar (track 3)
Wilton Felder – electric bass
Ed Greene – drums
Bobbye Porter Hall – congas, tambourine

The Emperor
ゆっくりとリズムが刻まれ、バードのトランペットが華麗に先陣を切る。ボビー・ハッチャーソン(ヴィブラフォン)、ハロルド・ランド(テナー)、ウィリアム・ヘンダーソン(エレピ)らの名手たちはダークでミステリアスなソロを聴かせてくれる。クルセイダーズのウェルトン・フェルダーは、低音域で暗い水の底を蠢く大蛇の如きベースを響かせ、サウンドの要を担う名演。ドラムのエド・グリーンはロック的な間でタイトなビートを繰り出す。エドは、後にスティーリー・ダンやジェフ・ベックにも重宝された白人ドラマー。

Jamie
前曲の余韻に浸りながらも、オルガンが教会における結婚式のような華やかな雰囲気を醸し、バードのトランペットが麗しくもブリリアントな音色でゆったりとフレーズを紡ぐ。まさに美しきインタールード。

The Little Rasti
長いドラムソロを導入にデヴィッド・T・ウォーカーがワウギターで、カッティングとソロのアンサンブルをじっくり聴かせてくれる。ジミ・ヘンドリックスが「エレクトリック・レディランド」やバンド・オブ・ジプシーズでの試みたセッションを思わせるアルバム最長17分41秒のジャム。次いでテナーとエレピのソロ、更にバードのトランペットで優雅に終了かと思いきや、ファズ・ベースの爆音で驚かされ、再度エレピが割り込む。最後はバードがカモメの叫びのようなトランペットでミステリアスに締める。あっという間の濃密な36分33秒。

あとがき
最初はブルーノートのCD再発キャンペーンでジャケ買いをしたのだと思いますが、今では数あるバードの作品の中でも一番のお気に入り。

このアルバムはLPでも持っていたい一枚。ジャケットも相まってトータルに優れた作品だと思います。未聴の方にはお勧め。私の友人もこのアルバムを気に入り、夜のドライブに最高と言っていました。まあ分らんでもない。

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