サックス奏者ジョー・ヘンダーソンの1974年発売のアルバム。ブルーノート時代に5作のリーダー作を残した彼は、独創的なフレーズと深みのあるダークなトーンで、独自の音楽スタイルを確立しています。マイルストーンから8作目となる本作は、全体的にダークなトーンで貫かれ、曲名に沿ったサウンドスケープがデザインされています。収録された曲「Fire」「Air」「Water」「Earth」は、古代ギリシャの哲学に基づく天地を構成する4大要素を表し、錬金術に関わる神秘的概念で作られたアルバムは、ただ事ではない気配を醸し出しています。
サウンドからは後期コルトレーンの影響を感じさせますが、同時期のファロア・サンダースやソニー・ロリンズらの作品と共鳴や影響がありそうです。ロック的な文脈で言えば、72年のサンタナの『Caravanserai』、ジミ・ヘンドリックスやシド・バレット期の初期ピンク・フロイドにも近い感触を覚えます。

- Joe Henderson (ts,fl,p)
- Alice Coltrane (p,harp,harmonium,taboura)
- Michael White (vln)
- Charlie Haden (b)
- Leon Ndugu Chancler (ds)
- Baba Duru Oshun (tabla,perc)
- Kenneth Nash (per,vo)
録音には “スピリチュアル・ジャズ” 界隈の同僚が参加している。ジョン・コルトレーンの未亡人アリス・コルトレーンのハープやピアノは、スピリチュアルな雰囲気に大きく貢献し、共同作品といってよい活躍です。ジャズにはあまり馴染みのないマイケル・ホワイトのヴァイオリンもスピリッチュアル・ジャズを語る上では重要な存在です。チャーリー・ヘイデンのビートはもはやジャズの文脈だけでは語れません。後にサンタナやマイケルジャクソンの“Billy Jean”でも叩く若きレオン・チャンクラーは個性全開とはいきませんが特徴的なハイハットワークで存在感を発揮している。
The Sidewinder by Lee Morgan
コルトレーンの影響を受けた当時の若手テナーサックス奏者、ジョー・ヘンダーソン、ベニー・モウピン、ビリー・ハーパーの演奏がお気に入りです。この3人は全員 “The Sidewinder” を公式に録音しています。ロックのビートを取り入れた初のジャズ曲と言われた曲は、ロック好きの私には耳馴染みが良く、自然と演奏したサックス奏者を好きになったようです。

1964 [The Sidewinder]
Joe Henderson (Tenor sax)

1971 [Live at the Lighthouse]
Bennie Maupin (Tenor sax)

1971 [Flute-In]
Billy Harper (Tenor sax)1
あとがき
70年代のジャズは、インパルスのアーチ・シェップやファロア・サンダースらが、メッセージ色の強いブラック・ジャズやスピリチュアル・ジャズと呼ばれるサブ・ジャンルを拡大させ、一方では、ソウルやゴスペル感覚に、ブラックシネマとも結びつくジャズファンクも活性化してきた時期になります。
1967年にマイルストーンと契約したジョー・ヘンダーソンは”Blood, Sweat & Tears”に参加するなどロックと接近した経歴もあり、ヒッピー思想やブラックエクス・プロージョンからの影響を自身のジャズで表現することに努めているようです。当時サンフランシスコの住民だっようです。
ジミ・ヘンドリックについて関連で触れましたが、ヘンダーソンの前作73年の「Multiple」には1曲だけジェームス・ブラッド・ウルマーが参加しギターを弾いています。マイルス・デイビス バンドのジャック・ディジョネットがドラム、デイブ・ホランドがベースによる演奏はかっこいいジャズロックです。
コメント