Miles Davis [Agartha]

Agartha JAZZ

「アガルタ」75年2月1日午前の部の記録。大阪フェスティバルホールにて収録された。
私のようなジャズの本道から外れた聴き方をしてきた者が、マイルスについて語るのはお門違いかもしれませんが、60年代後半の電化マイルス期と称される時期から晩年までの作品はよく聴いています。

ジミ・ヘンドリックスやPファンクを聴いていた私に「じゃずじゃ」のマーク・ラパポートさんが勧めてくれた1枚が「アガルタ」でした。手にした横尾忠則さんによるジャケットはまさに衝撃的。私は伝奇作家・高橋克彦さんの総門谷シリーズを愛読していたので、アガルタという地下世界も、横尾忠則さんのアートワークにもなじみがありましたが、ジャズのジャケットで空飛ぶ円盤や楽園世界をコラージュした構図に、未知のパワーや地下世界への誘う危うい魅力を感じました。ある記事によると、ボブ・ディランはサンタナから横尾忠則が手掛けた「ロータスの伝説」のアルバム・ジャケットを見せられた時、口をあんぐりと開け、涎を垂らしたそうです。ディランのその気持ちはよく分かります。

  • Prelude
  • Maiysha
  • Interlude /Theme from Jack Johnson

“プレリュード”には前奏でありながらアルバムの音楽的ハイライトが凝縮されている。マイルスのトランペットは、カッコいいフレーズを吹くが断片的。空間を支配しているのはアル・フォスターのロックなリズム、マイケル・ヘンダーソンのファンクなベースに、シャープなカッティングを繰り出すギターのレジー・ルーカスらによるリズム隊。ソロをとるのはマイルスに加え、ギターのピート・コージーとアルトサックス/フルートのソニー・フォーチュン。ピートのギターはノイズ発生装置であり、ジミ・ヘンドリックとマイルスの実現しなかったセッションを現実のものにするかの如く、ワウやエフェクターを駆使し、ドローンやディストレーションを利かせた異様に伸びるフレーズを繰り出す。マディ・ウォーターズの問題作「エレクトリック・マディ」のギターが彼だとは後に知る。ロックともファンクともジャズでもないアンサンブル、もしかしたらジミ・ヘンドリックスの先にはこれがあったのかと思わせる領域。

よくよく分かってくればマイルス・デイビスのトランペットを聴くアルバムではない事。むしろ音楽監督としてのオーラを感じ、ジャンルレスな演奏を楽しむものなのだと。他のアルバムを聴いていなかった私には、ここのフレーズはあの曲からという聴き方ができなかったが、それでもすんなり聴ける面白さがありました。

これはデイブ・リーブマンとの73年の来日時ですね。

当時NHKで放送された映像がyou tubeで見られるようになり、本作品が動画で追体験できるようになりました。本当にありがたいことです。これは映像と共に楽しむのが正解なんですね。意外とこぢんまりとしたステージで、端の方に着座したサングラスにアフロ頭のピート・コージー。巨躯の圧倒的存在感と怪物感。ステージ中央でまだまだシャープなお姿で、動くマイルスが拝めること。私はリアルタイムでは体験できなかったのですが、この時代の音楽の愛好家として本当にいい時代でしたね。

Member of the Miles Davis Band Pete Cosey performing Berlin 1973. American jazz guitarist. (Photo by Jan Persson/Getty Images)

余談ですが、「アガルタ」と「パンゲア」を熱心に聞いていた時期に、シンガポールからクアラルンプールまで8時間程度、車中で聞かされた妻には「いいかげんにしてくれ」と怒られました。

最近ブックオフやヤフオクでマイルス本を漁っているのですが、すごく興味が湧いたのは晩年のマイルスのファッションです。スーツを着た若いマイルスがカッコいいのは当たり前ですが、私が改めて注目をしたいのが、81年に復帰後の黒ラメパンツにド派手ブルゾンの悪趣味すれすれの晩年のマイルスです。

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