Elliott Murphy [Aquashow]

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エリオット・マーフィーのデビューアルバム「Aquashow」は1973年のリリース。
エリオット・マーフィーは72年にヴェルヴェット・アンダーグラウンドのライブ・アルバム「1969: The Velvet Underground Live with Lou Reed」にライナーノーツを寄稿している。デビューを同じくするスプリングティーンはアメリカを代表するロック・アイコンとして名声を築く一方、マーフィーは今に至るまで路地裏のアンダーグランドの痩せ細った金髪の青白い放蕩者のイメージを持ち続けている。私はアメリカの良心や社会の閉塞感を語るスプリングティーンの「明日なき暴走」も「ザ・リバー」、「ボーン・イン・ザ・USA」も好きなアルバムですが、マーフィー、ルー・リード、ミンク・デヴィルのようなワイルド・サイドの家出少女やダンサー等、都市の闇のストーリー描くソングライターの存在に惹かれてしまう。

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  1. How’s The Family
  2. Hangin’ Out
  3. Hometown
  4. Graveyard Scrapbook
  5. Poise ‘n’ Pen
  6. Marilyn
  7. White Middle Class Blues
  8. Like A Crystal Microphone
  9. Don’t Go Away

現在まで35枚以上のアルバムを発表するマーフィーの本デビューアルバムは、当時まったく注目を浴びることはなかったそうですが、バラードやシャッフル、ロックンロール、ブルースロック等、マーフィーの今日に至るスタイルの縮図のようなアルバム。基本的に彼の繊細な声と詩を聴かせるシンプルなスタイルで、フォークロックや初期エレクトリック導入時のボブ・ディランのフォーマットを引き継いでいる。本作では ”Last of the Rock Stars” という代表曲をものにした。

Last of The Rock Stars
ロックンロールの黄金時代を象徴するミュージシャンたちへのオマージュ。歌詞には「シボレーに乗ったキング」という表現があり、エルヴィス・プレスリーを連想させますが、彼は1977年に亡くなっており、アルバム発売当時は健在でした。タイトルが複数形の「Stars」であることから、より広義に死亡したロックスターたちを称えていると考えられますね。

このアルバムが録音されたニューヨークのレコード・プラントスタジオは、ジミ・ヘンドリックスも頻繁に使用したスタジオであり、ジミ・ヘンドリックスを想起させる “Purple Haze” や “Axe” “Guitar”といった単語が歌詞に現れる。1970年にはジャニス・ジョプリン、ジム・モリソン、ジミ・ヘンドリックスが27歳で亡くなっている。

エリオット・マーフィーは、この曲を通じて自分が「最後のロック・スター」としての役割を果たす決意を込めているようです。ロッカーとして家庭を持つ恐れ、また自分がロッカーとしての使命を継承する意思を込めているようです。曲調はハーモニカも入ったフォークロック。彼の声には独特のビブラートがあり繊細で個性的。演奏はその声に寄り添いながらも疾走感があり、聴く者の焦燥感を駆り立てる。現在もパリで活動を続けるマーフィーは、まさに「最後のロック・スター」の称号にふさわしい存在。彼の音楽は、27クラブとは異なる形でロックの精神を受け継いでいる。

私が初めてマーフィーの曲に接したのは多くの方と同様に、ザ・ルースターズがカバーした ”Drive All Night“。エレポップぽいですが、アングラなロックを感じさせる曲は直ぐに気に入りました。数年後マーフィーの2枚目から4枚目のアルバムがCD化され、オリジナルを聴けば迫力のあるブルース・スプリングスティーンのような疾走系の典型的なロック。あれ?別の曲の様。3枚目に追加収録された初期バージョン “Night Connection” が参照元で、ザ・ルースターズはほぼ完コピーでしたね。(数年前に来日し花田さんと当曲をデュエットしている映像がありました)

2作目のアルバム「Lost Generation」はドアーズのプロデューサー、ポール・A・ロスチャイルドがプロデュース。3作目「Night Lights」はブルース・プロジェクトのスティーブ・カッツ。「Just a Story from America」は英国録音で、元ストーンズのミック・テイラーやフィル・コリンズがセッションに参加している。このアルバムまではメジャー・レーベル、RCA、CBSの製作であり、痩せた音のデビューアルバムと比べても音に格段の迫力がある。曲も編曲もドラマチックで濃厚、マーフィーの歌唱もいいのだが、通受けはするが一般大衆受けはしなかったようだ。ここまでの4枚は比較的入手しやすいのでおススメしたい。”Drive All Night“は必聴です。

Lost Generation
Night Lights
Just a Story from America

マーフィーは現在に至るまでカルトなロッカーとしての存在です。ビジネス的にどうかは分かりませんが、35枚以上のアルバムを発表するアーティストとして本望は果たしているのではないでしょうか。私のように全てのアルバムを集める熱心なファンもいる。公式HPは充実しているしYoutubeを見るとギターを持った息子さんらしき青年とステージを共にしている。まさに The Last of The Rock Starsの生き様。

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