- Brown Sugar
- Sway
- Wild Horses
- Can’t You Hear Me Knocking
- You Gotta Move
- Bitch
- I Got the Blues
- Sister Morphine
- Dead Flowers
- Moonlight Mile
ローリング・ストーンズの傑作「スティキー・フィンガーズ」
71年発売アンディ・ウォーホルが手掛けたジッパー付きのアルバムカバーも有名なストーンズを代表する名作アルバムのひとつ。ミック・テイラーが2代目ギタリストとして初めてフルに関与したアルバム。ロックやブルース、カントリーなどアメリカ音楽の要素が融合され、ローリング・ストーンズのスタイルとして確立されている。
1. Brown Sugar
ルーツ探求の成果と現在に至るストーンズの音楽的スタイルを確立し、ロックの歴史においても重要な70年代の幕開けを告げた曲のひとつである。”Jumpin’ Jack Flash”の成功を受け、そのスタイルを延長させ、また中間点及び下敷きの曲として[Let It Bleed] 収録の ”Live With Me“ があるのだと思う。その”Live With Me“はドラムサウンド、ボビー・キーズのサックスやギターリフがプレ「ブラウン・シュガー」のようである。その「ブラウン・シュガー」はキースの5弦ギターによるリフの間が特徴的で、ドラムのサウンドは迫力があり、リズムの重心は低く後ろノリのグルーブがある。ミックの歌は曲のノリに合わせ奴隷商人やむち打ち、ドラッグ等を暗示させる物騒な物語を打楽器に吐き出してゆく。この曲は具体的な特徴はあるにせよ、言葉では表現できないオーラをまとっている。
2. Sway
人生をコントロールできない不安や恐れについて。キースはギターを弾いておらず、ヘビーなリズムギターはミック・ジャガーによるもの。ブルージーなギターソロは新加入のミック・テイラーによる。ストリングスも入り不穏な雰囲気でちょっととっつきにくい。初見からそれ程思い入れのない曲で今に至る。申し訳ない。
3. Wild Hoses
マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオでの録音。このスタジオはアメリカ南部に根ざしたソウルの傑作アレサ・フランクリン、ボビー・ウーマックやステイプル・シンガーズなどの作品を数多く生み出したことで知られる。名盤探検隊で紹介されたジム・ディキソンの「ディキシー・フライド」(72年)もこのスタジオで録音されたアルバムのひとつである。彼はピアノでこの曲に参加しているが、最終ミックスで音を思いっきり下げられており可哀そう。もの悲しいアコギの響きとミックに絡むキースのコーラスが切なさを募らせる。このスタジオで録音をする必然性は感じられないが「スティキー・フィンガーズ」を特徴づける名曲のひとつである。曲のタイトル「Wild Horses」は、マリアンヌ・フェイスフルを指しているのかと思いきや、実際には野生の馬が家から遠く離れた場所に出ることを意味し、引き戻すのが大変だということを表現している。キースによれば、この曲は「ツアーに出て、家から何百万マイルも離れているとぼやくいつもの事」についての曲のようだ。
4. Can’t You Hear Me Knocking
2分半程度で歌入り部分は一旦終了しジャムセッションが5分にわたり続く。バンドメンバーに加えコンガ等の打楽器とサックス、オルガンが加わっている。キースのリズムギターはイントロから切れがよく、チャーリーのドラムはジャズぽいスタイルであおる。終盤にかけてのミック・テイラーのブルージーなソロは、フレーズも音色も完璧であり、もうすこしぎらつくとサンタナかも。ボビー・キーズのサックスは出自である南部のノリで忌憚のないフレーズでスペースを埋める。
5. You Gotta Move
元々作者不詳で歌い継がれた古典であるが、フレッド・マクダウェルが65年に吹き込んだスライドギターの弾き語りを参考にしている。ヒルカントリーという古典的なミシシッピスタイルの原曲にチャントのようなコーラス、エレピやドラム、ギターも重ねたバンドでの演奏によりストーンズ・スタイルのブルースとして昇華している。
6. Bitch
ヘビーメタルもブラックサバスもアイアンメイデンも知らない、初心な当時高校生の僕にはタイトルの”Bitch”も、曲調も不良が聴く怖い音楽だと思っていた。今思えば笑える話です。この曲もアルバムを特徴づける名曲である。二人のギタリストが共にリズムとリードを担当し、チャーリーのドラムは低くステディにリズムを刻む。ホーンセクションはブラスロックのように後方から曲を盛り上げ、ミックの歌唱も特筆ものである。何回かライブで披露されているがライブでこのノリの再現は難しいのだろう。スタジオ・バージョンを有難く聴くのが正解だと思う。リマスターされた音で迫力が増し、曲の魅力が際立った。
7. I Got the Blues
ストーン自身もカバーしたオーティス・レディングの「I’ve Been Loving You Too Long」のオマージュですね。アルバムを通して聴くにはチェンジ・オブ・ペースとしていいアクセントの曲となっている。ただ単体で聴けばオーティスを知っている耳にはいわゆるオマージュであり、本物を聴くべきだと思う。
8. Sister Morphine
キースとミックに加えマリアンヌ・フェイスフルが共作。モルヒネの依存症の事なので共感はしにくい。それ程思い入れのない曲。
9. Dead Flowers
ストーンズのカントリー調を愛する者にとってこの曲は ”Let it Bleed“ に続いてこのアルバム、いやストーンズ史においても屈指の名曲。歌詞にはヘロインを思わす相当ヤバい内容を仄めかし、それをミックはカントリーロック調に朗らかに歌い上げる。70年から72年のライブではミックとキースが一本のマイクを挟み歌う姿がファンにはたまらない瞬間であった。
10. Moonlight Mile
キースが不在。当時はピンとこなかったが聴けば聴くほど味が出るいい曲である。アルバムを締める曲として郷愁のような悲しさは日本を思わす短いメロディの旋律からだろうか。ミックは「Japanese thing」とその旋律を呼び、琴や琵琶を思わす鳴りに思える。
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