1. One Hit (To the Body)
2. Fight
3. Harlem Shuffle
4. Hold Back
5. Too Rude
6. Winning Ugly
7. Back to Zero
8. Dirty Work
9. Had It With You
10. Sleep Tonight
ローリング・ストーンズ『ダーティ・ワーク』(1986年)
トレンディな装いのジャケットはバブリーな時代を反映しているし、ストーンズの皆さんもよく撮影を頑張ったと思う。ミック・ジャガーのソロ活動にキースが腹を立て、バンド内の不和がアルバムに悪影響を与えたと指摘されているが、内容は悪くないと思う。キースはこのアルバムのリリース後、インタビューに答えて「100%出来に自信がある」言っていた。2曲ボーカル曲を採用しているのも初でありキースの主導で制作されたというのも納得である。(ソファーの真ん中に一人ドカ座りのキースの得意げなことよ。ミックの足はフロントマンとしての意地の表れだろうか。)いくつかの曲にチャーリー・ワッツやビルは参加せず、セッションマンが代わりを勤めている。
1. One Hit (To the Body)
映画マッド・マックスのような終末観と、ミックとキースの険悪な雰囲気をストレートに描く『ワン・ヒット』のプロモビデオは、単純に文句なくカッコよかった。ロンのアコギのイントロから引き込まれ、隙間を活かしたキースのエレキのリフは曲を通してスキャンダラスに鳴り響き、アコギのアウトロで締めくくる。ボクシングの戦いを引用しつつ、互いへの敵意をぶちまける歌詞とミックの叫びは、一触即発の緊張感と怒りに満ちている。この険悪なオープニングは、馴れ合いを嫌うダイハードな当時高校生の私の心を激しく揺さぶったはず。(笑)今聞き返してもハードなギターに緊張感にあふれるこの曲の普遍的な魅力は色褪せてない。ポップですらある。
2. Fight
ボディへの一撃の次はファイト。「鼻のあった場所に穴があるぜ」「血まみれの天井」のように。怒りは収まらずむしろとことん闘ってやると述べている。ギターは音の粒子まで分かるようなクリアなサウンドでハード。
3. Harlem Shuffle
1963年ボブ&アールの曲。ジョージ・ハリソンはこの曲を「史上最高のレコード」と称賛した。知らんけど当時人気のクリエイターとコラボしたアニメと実写を融合させたプロモーションビデオは一体何であったのか実に謎である。クリアなサウンドはこのカバー曲に新たな息吹を加えようとしているのだろうが、あまり具合はよくない。私もジョージ同様にボブ&アールの原曲「ハーレム・シャッフル」を愛聴している。もともと原曲に則して、ソウルの大先輩ボビー・ウーマックさんとのデュエットだったのに声を消されて可哀そうなボビー。
3. Hold Back
「ちょっと待って。賢い俺の話を聞け」と。今度はお説教で恐喝的である。ミックは、喉を潰し気味にシャウトしている。メタリック・ハードなスピード感で輪郭のはっきりベースとハードなギターのアンサンブルは、後に登場するMr. BIGを思い出せる。ユーモアや風刺、皮肉の効いた詞を適度にハード且つポップに仕上げるのがストーンズの持ち味だと思っているが、少々強面でストーンズらしくない曲だと思う。
4. Too Rude
キースによるダビーなレゲエのカバー曲。タイトルはジャマイカ風にいえば「あまりにも無礼な奴」となる。ここでも一貫したテーマは存在している。(笑)レゲエ界の大スター、ジミー・クリフがコーラスで参加。
5. Winning Ugly
「どんなに汚い手を使っても勝つ」と。勝利の為に手段を選ばない姿勢、成功のため弱者を犠牲にすることを厭わない態度が実に不適切。これはミック主導なのかな。ミッドテンポでダンサンブル、ギターも程よく主張し、リズムも弾む。歌詞を分からず聴けばそれなりに気持ちがよい。ストーンズらしくはないが。
6. Back to Zero
元オールマン・ブラザーズバンドのキーボード担当チャック・リーヴェルが共作している。ミックのソロを想定した曲をストーンズが採用した感じだろう。ハードなアルバムの中では異色。
7. Dirty Work
ポップさはなくストーンズの名曲にあるマジックもないが、“Dirty Work”は悪くない。ギターが短いフレーズを刻み、左右の2本もしくは3本のギターが曲をハードにドライブさせている。タイトルの「汚い仕事」とはどういう事だと興味を持ったのがきっかけだが、これは権力を持つ者が他人に不快な仕事を押し付ける行為を指しています。汚い奴の行いを英語で表現するとこうなるかと大変勉強になった記憶がある。(笑) 「どっか阿保に汚れ仕事をさせ、お前は日向ぼっこしながら終わるのを待つだけさ」とあり、これはミック・ジャガーがソロ活動に集中していたことに対するキース・リチャーズの皮肉だと言われています。この曲は、私にとって昔からお気に入りの一曲です。
8. Had It With You
ブルース調のハードなブギーで、これもキース作のミックへの愛憎交じりの悪口。ロン・ウッドが共作で、変なサックスもプレイしているはず。ベースが不在で音は薄いはずなのにこの厚みのある演奏に単調な曲を聴かせる構成力。ミックによるハーモニカも音色も楽しい。
9. Sleep Tonight
ボディへの一撃から最後は「少し寝た方がいいよ」と優しいセレナーデで終わる。キースのバラードはこの曲で極まり、以降のソロアルバムのバラードの形はここにあると思う。この曲の余韻として前年に亡くなった元ストーンズのピアノ担当イアン・スチュワートの弾く”Key to the Highway”で締めくくる。
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