Rolling Stones [Undercover of the Night]

ROCK
amazon Undercover of the Night
  1. Undercover of the Night
  2. She Was Hot
  3. Tie You Up (The Pain of Love)
  4. Wanna Hold You
  5. Feel On Baby
  6. Too Much Blood
  7. Pretty Beat Up
  8. Too Tough
  9. All the Way Down
  10. It Must Be Hell

ローリング・ストーンズ『アンダー・カヴァー』
前作「TATTOO YOU」は過去のアウトテイクの焼き直しだが、83年のこのアルバム「Undercover of the Night」はピカピカである(当時)。特筆すべきは録音とミックスが秀逸でハイレゾ時代の今でも音の質感を楽しめる音響設計だと思う。もう一つはヒップホップやNYの最新ディスコなど、時代に向き合った曲作りに取り組んだこと。最後にアルバムの歌詞とメッセージ。キースはこのアルバムのミックの詩は素晴らしいと言っていた。社会問題の提起にシニカルな視点にユーモアも。

1. Undercover of the Night
“Street Fighting Man”もそうだがストーンズが時たま見せる社会風刺の精神とヒップホップの換骨奪胎の表れであろうか。ヒップホップには社会風刺の側面があるので、この曲も独裁政権下での政治的抑圧を伺わせる内容であり、プロモビデオもその趣旨に添い、キースもミックも緊張感ある演技を披露している。ストーンズの歴史の中で特異な曲かもしれないが、ギターの鋭いフレーズでストーンズらしい仕上がりなっている。

2. She Was Hot
私には5本の指に入る好きな曲。ユーモラスな内容で、ストーンズ流ロックとしてツボを押さえた音作りと終盤に向け盛り上がる構成は曲単体でも楽しめる。ディーヴァとミックが絡むオールディーズ風な演奏シーンとミックとキースに俳優陣がコミカルに演技するシーンが合わさったジュリアン・テンプル監督によるプロモビデオがまた素晴らしい。ディーヴァの熱い吐息にボタンがはじけ飛ぶ男どもの下半身。煙草の爆速吸いに、はち切れそうな上腕二頭筋など。落ちはそのディーヴァのマネージャーがチャーリー・ワッツだった事。このプロモをみて笑えるのはおじさんだけなのだろうね。

3. Tie You Up (The Pain of Love)
「愛の痛みとは何故こんなにも神聖なのか」自分を縛り上げてくれとちょっとSMチックなのかもしれない。

4. Wanna Hold You
キース・リチャーズがリードボーカルを務める曲で”Little T&A”と同系統のシンプルなロックンロール。単調なリズムだがベースは弾むし、キース自身のボーカルの重ねも凝っている。ギターとボーカルを真ん中に寄せたミックスは大胆だが、サウンドの質感は悪くない。フロアで踊れるロックを狙ったのだろうか。

5. Feel on Baby
少しダブの雰囲気も入ったレゲエ。ギターのリフも作りこまれ、エフェクトをかけたハーモニカも猥雑な雰囲気を醸し出す。サウンド設計の素晴らしさもあり実にストーンズらしいレゲエに仕上がっている。スライ&ロビーが参加している。 

6. Too Much Blood
ミックがラップで当時パリでおきた佐川事件に言及している。血まみれなのだが曲調はディスコぽく”Heart Breaker”を彷彿とさせる切れのあるホーンにベースも弾み、派手な演出である。キースは不参加。

7. Pretty Beat Up
ロン・ウッドもクレジットに入っているので主な作者はロンだろう。1980年代のニューヨークのディスコシーンを意識したファンキーなビートとグルーヴ感でデビッド・サンボーンのアルト・サックスがダンスフロアにぴったりのサウンドを作り出している。

8. Too Tough
前曲までヒップホップやNYの最新ディスコシーン等と向き合い、そのスタイルを取り込もうとしてきたようだが、ここから終盤3曲は従来通りの安心のストーンズ節が続く。「最初は毒で2回目はドラッグでナイスなトライだったね」やろうと思えば「20ラウンドまでやれるぜ」等、歌詞に一読の価値はある。タフでエネルギッシュなロックだが、少しギターの絡みに捻りが無いのかな。

9. All the Way Down
シンプルでストレートなロックンロールで、ストーンズ流のロックが好きな私にとってはたまらない一曲。21歳の頃の純粋で無邪気な自分と、恋愛を通じて得た教訓が描かれています(笑)。ミックの歌う歌詞はラップ調で、自伝的かつシニカルでコミカル、自虐的でエロティックです。ただ、曲のタイトルとリフレインがもう少し魅力的であればと思う。ギターの刻みは心地よいものの、明快なギターリフがないため、ライブや大衆受けが難しいのかもしれません。

10. It Must Be Hell
地球規模の食糧事情や貧困格差と教育問題、フードロス、宗教等現在に至る問題をシニカルに取り上げる。ミックが書いたのであろう歌詞は、シニカルでありこのメッセージは当時高校生の僕を揺さぶったのだろう。構成は最後まで単調さを回避しているが、タイトルと歌詞のリルレインがストレート過ぎていま一歩魅力がないのかな。ミック主導なのかもしれないギターのリフは単調だが力強い。リフの再利用は”Honky Tonk Women”からか[Exile on Main Street] の”Soul Survivor”からだろう。

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