私は1969年生まれなのでジミ・ヘンドリックスをリアルタイムでは知らない。彼のアーティスト、サウンド・クリエイターとしての異端性と偉業は各アルバム、伝記映画、書籍等を通じて学んだつもり。後にも先にもジミ・ヘンドリックスを超えるアーティストはいないと思う。「ローリング・ストーン誌が選ぶ歴史上最も偉大なギタリスト」のランキングで何度も1位に選ばれている。彼のアーティストとしての特異性は、音を色彩として感知し表現する共感覚の持ち主である事。リバーブが欲しい時は「もっと紫を足してくれ」とプロデューサに指示していたという。下積み経験を経て、彼のアーティストとしての進化は、ギターのエフェクター、エレクトロニクス機器、アンプの出力等の技術進化と足並みを揃え、彼の頭の中で色彩となって溢れる音像を作品としてアルバムに結実させる事ができた事。何より彼の才能を認めイギリスでデビューを画策した元アニマルズのマネージャー チャス・チャンドラーの慧眼が大きな役割を果たしたのだろう。デビューから死まで活動期間は4年。生前に公式に発売されたアルバムは4枚のみ。
- Foxy Lady
- Manic Depression
- Red House
- Can You See Me
- Love Or Confusion
- I Don’t Live Today
- May This Be Love
- Fire
9. Third Stone From The Sun
10. Remember
11. Are You Experienced?
12 Hey Joe
13 Stone Free
14 Purple Haze
15 51st Anniversary
16 The Wind Cries Mary
17 Highway Chile
デビューアルバム。シングル曲をまとめてアルバムにしたように英国、米国仕様で収録曲は違う。CD時代になりボーナス曲としてこの時期の多くの曲が収録された。シングルB面だった「Stone Free」のオリジナルが収録されているのがうれしい。ヘビーメタルの先駆け「Purple Haze」の紫煙ただようサイケデリック感、「Fire」のポリリズムと尋常じゃないスピード感、太陽系スケールのインスト「Third Stone From The Sun」=「地球」。君は経験したかと問う「Are you Experienced?」。この曲は「退化をコンセプトにしたアメリカのバンドDEVOがカバーをしているのが面白い。(サティスファクション程解体をしていない。いたってストレートな解釈)テープの逆回転やエフェクトによる音像処理、スタジオでの会話のコラージュ等のスタジオでの実験作業がシングル曲としてコンパクトにまとめている。独創的な曲想にギターのスピード感と爆発力。彼が漂わせる圧倒的な本物感とブルースやR&Bへの造詣の深さに当時の英国のミュジーシャン、クラプトンやベックらに大きな衝撃を与えたようだ。
「Hey Joe」
ジミ・ヘンドリックスのデビュー曲であり、彼のキャリアを象徴する一曲。この曲は出所が不明で、版権を主張する者が複数いる謎の曲。チェス・チャンドラーがアメリカでこの曲を歌う人材を探し求め、ジミ・ヘンドリックスに巡り合ったと言われている。もの悲しいトーンのギターが不穏に響き、コーラスはまるで黄泉からの声のようだ。ジョーは浮気した恋人を撃ってしまい、メキシコに逃走するという内容。
「Highway Chile」
確か私はLPで「スマッシュ・ヒッツ」というアルバムで最初に聴いたと思う。シャッフルのリズムが心地よく、ジミヘンにしてはギターもリズムもシンプルで馴染みやすい。音量を上げれば側で演奏しているかのような臨場感とゴツゴツとした迫力がある。また”Highway”, “Rolling Stone”, “Left Home …age 17” 等の高校生の耳でも拾える英単語がカッコよく響いた。「彼の埃っぽいブーツは、彼のキャデラック…燃えるような髪は風に吹かれ、ベッドで寝たのはいつだったか。」17歳で故郷を離れ、転がり続けながら自己探求をするストーリーと状況描写は生々しくも普遍的で共感をさそう。今の時代では再注目されるような曲ではないかもしれないがよく聴く曲です。”Rolling stone gathers no moss” (転がる石には苔が生えない)というロック界隈では有名な格言も歌詞に登場する。
「Foxy Lady」
ジミヘンの当時のガールフレンドから着想を得た曲。Foxy=Sexyで、日本語でも「女狐」という表現をするので同じようなニュアンスですね。ジミヘンコードと呼ばれる独特の音色と奏法が革新的で、1967年という彼の初期の作品らしく、録音もギターの音も荒々しい。個人的には曲のひねりが少し物足りないかなと思うが、ライブで真価を発揮する曲である。ZZ Topが演奏しているのをみて改めて良い曲だと思う。
「Red House」
ジミ・ヘンドリックスのオリジナル・ブルース。まだ若いジミヘンをマディ・ウォーターズやジョン・リー・フッカーのようなブルースの巨人と比較するのはいささか分が悪いが、当然声の深みに欠ける。そのジョン・リー・フッカーは、1997年のアルバム「Don’t Look Back」で彼のスタイルで録音している。また「Rock and Roll Hall of Fame(1995)」ではボズ・スキャグスが元ガンズ&ローゼスのスラッシュがギターを演奏している。こちらも一聴の価値あり。
「I Don’t Live Today」
ジミ・ヘンドリックスは、幼いころチェロキー・インディアンの祖母に度々預けられ、その宇宙観や神話体系、文化から大きな影響を受けている。当時のインディアン居住区の厳しい状況が、彼の歌詞に込められた「今日を生きられない、たぶん明日も」というメッセージになっている。ジミヘンの声や演奏には、チェロキー族の血を引く者としての怒りが込められている。
「Stone Free」
ジミヘンのオリジナル曲。英国シングルB面曲とはいえイントロからギターリフとその展開の荒々しさ、ジミヘンの声の迫力や凄みも最後までエネルギーと緊張に満ちていて飽きさせない。曲としてコンパクトにまとまっていて、ヒットしてもおかしくない魅力を備えている。BPMを早くしたバージョンもある。エリック・クラプトンやサンタナもマルコピーしている。
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