- Where the Streets Have No Name「約束の地」
- I Still Haven’t Found What I’m Looking For
- With or Without You
- Bullet the Blue Sky
- Running to Stand Still
- Red Hill Mining Town
- In God’s Country
- Trip Through Your Wires
- One Tree Hill
- Exit
- Mothers of the Disappeared
第30回グラミー賞“最優秀アルバム賞”受賞作。全米1位・全英1位。U2のオリジナル・アルバムでは最大の売上枚数を誇り、「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」、「ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネイム」、「アイ・スティル・ハヴント・ファウンド・ホワット・アイム・ルッキング・フォー(終りなき旅)」というU2を代表する大ヒット・シングルを収録した文句なしの名盤。
87年当時に小林克也さんの「ベスト・ヒットUSA」紹介していたアルバムなので、プロモションビデオをリアルタイムで見た記憶がある。U2の面々には当時のロックスターのキラキラ、チャラチャラ感は一切なく、若々しく質素で黒基調のいで立ちはジャケットのイメージ通りで神秘的でクール。ちょっとみすぼらしい感もあった。
過去の批評では「ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネイム」の壮大さが際立っていて、アルバム全曲に及んでいないと指摘もある。確かにその通りかも。宗教的な意味合いでの「約束の地」、76年のアメリカ・ツアーでの体験からアイルランド人にとって憧れの「約束の地」と現実、この2つの観点から、後者はヘロイン過や軍事介入、炭鉱事件などへの社会的問題が題の曲になっている。ゴスペル調コーラスの入った曲もあり宗教色も強い。「ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネイム」のプロモショービデオではボノがロケ地で「この建物は聖書を思わせる」と発言している。アメリカ市場を意識した計算づくの発言だろうけど。
都市伝説だとジョシュア・ツリー国立公園でキース・リチャーズとグラム・パーソンズがUFOを目撃したそうだ。
1. Where the Streets Have No Name「約束の地」
ブライアン・イーノが奏でるアンビエントな音響効果とエッジによるディレイを利かしたギターが空間に奥行きを与える壮大なイントロ。政治色なアジェンダの切取は鋭いが、技量的に平均的なロックバンドが、ブライアン・イーノにプロデュースを依頼し、前衛とまでは言えないが並みのバンドではできない音をモノにし、世界的ヒットを記録する。冒頭3曲は永遠の名曲です。
2. I Still Haven’t Found What I’m Looking For
単純に考えれば前曲の「約束の地」は見つからず、探求まだ続くよという曲。この時点でキリスト教色を感じるが、次作「ラトル&ハム」ではゴスペル・コーラスと共演し、更に荘厳な雰囲気を醸す。「まだまだ探求の最中です」とは多くのキリスト教信者リスナーにとって、共感を呼び易い曲ですね。計算づくだと思うけど。わたしはスタジオ・バージョンもライブ・バージョンのどちらも、ボノの歌唱が光る名演だと思っています。
3. With or Without You
リアルタイムで実感したヒット曲。ブライアン・イーノが奏でるシンセとベースが座標を作り、ギターの深く煌めく音色は、空間に奥行をもたらしている。ボノは静謐に厳かにエモーショナルに曲を盛り上げる。歌さびは一度聴いたら忘れられない。ドラムは静かに始まり、ボノの感情と対話するかの様にパターンは変化を繰り返す。音響効果にパフォーマンスの全てが有機的に機能した美しい曲。
4. Bullet the Blue Sky
アメリカ政府のニカラグア政策への政治的介入を批判するU2らしい曲。ドラムの音はレッド・ツェッペリンのジェイソン・ボーナムの線を狙ったようで、アルバムの中では一番怒りを感じさせるヘビーな音作りになっている。次作「rattle and hum」(がらがらぶんぶん)はこの曲の歌詞に由来する。
5. Running to Stand Still
ダブリンにおけるヘロイン問題を中毒カップルの視点で描いている。イントロのスライドギターにアメリカツアーを経たU2のアメリカルーツ探検の成果が見られる。ボブ・ディランの89年のアルバム『オー・マーシー』のプロデューサーにダニエル・ラノワを推薦したのはU2のボノですが、この曲の静寂なサウンドは、後に発表されるボブ・ディランの曲と共通する雰囲気がある。歌詞は重いが、ボノらしい歌唱がシンプルに響くアコースティクなバラード。
6. Red Hill Mining Town
英国サッチャー政権時に起きた、非採算炭鉱の閉鎖に抗議するストライキと炭鉱労働者や家族らの離散や悲しみ、希望を取り上げている。深いエコーのかかった静謐な雰囲気でベースとドラムは力強く、ボノの歌は後半に向け熱を帯びる。サッチャーを批判する英国ロッカーは多いですね。
7. In God’s Country
エッジのギターはアルバムを通して好調だが、型にはまっている感も否めない。バリエーションのひとつがこの曲。荒涼とした砂漠と干上がった川、信仰と退廃を感じさせる。アルバムのコンセプト、カヴァーイメージとタイトルに直結する曲だと思う。
8. Trip Through Your Wires
ハーモニカには次作への萌芽が。荒涼とした砂漠の空に、天使か悪魔か?聖書の描くイメージが強いです。
9. One Tree Hill
宗教色は強いが嫌いではない。心なしか明るい。アルバム後半では詩も含めて好きな曲になるかな。
10. Exit
前半はベースとボノの存在感が聞き物。他は効果音程度かと思ったが、後半で初期を彷彿とさせるテンションで走る。愛による癒しと銃。出口はあるのか。
11. Mothers of the Disappeared
タイトルから深くて怖い。悲哀に満ちたアルバムの最後を締めるに相応しい曲。抽象的で意味するところは不明でいい。
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