コロンビアから4枚目のソロアルバムで79年のアルバム。ハンターのソロ活動は、デビット・ボウイのジギー・スターダスト期を支えたギタリスト、ミック・ロンソンの存在が大きい。彼らは共にモット・ザ・フープルを脱退し、ハンターの75年の初ソロアルバムの共同制作からつかず離れず活動を継続していた。ストーンズ、ヤードバーズやザ・フー等からなる英国ロックの正統であり、クイーン、デフ・レパード、クラッシュに連なる偉大な存在です。
- Just Another Night
- Wild East
- Cleveland Rocks
- Ships
- When the Daylight Comes
- Life After Death
- Standin’ in My Light
- Bastard
- The Outsider
Cleveland Rock
1977年のシングル「イングランド・ロック」の改作曲。アメリカのクリーブランドはロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)の本拠地であり、当地のDJアラン・フリードが「ロックン・ロール」という言葉を生み出した、ロックの聖地として知られています。クリーブランドに敬意を表して「ご当地ソング」として制作されたそうです。
アラン・フリードの番組を模した前振りから始まり、マックス M. ワインバーグ(E. ストリート・バンド)のドラムとギターのパワーコードがユニゾンで突入する。続いてハンターのカウントが入り、ブレイクではザ・フーの「Baba O’Riley」風の発信音が響く。これらが繰り返され次第にテンションが高まり、歌の本編に突入する。ミック・ロンソンのギターは、時にピート・タウンゼントを思わせるコードワークとカッティングで、時にE. ストリート・バンド風でもある。イアン・ハンターのシャウトを交えたボーカルは、パワフルでマックスのドラムもその持ち味を十分に発揮する。エンディングではブレイクでじらし、曲冒頭のカウントに戻り終了する。
「明日なき暴走」発売直後で波に乗る、ブルース・スプリングスティーンのバンド・フォーマットに、ザ・フーの「無法の世界」を彷彿とさせる展開を取り入れ、素晴らしいロック・アンセムに仕上がっている。タイトルに相応しいロックン・ロールであり、まさにイアン・ハンターの代表曲です。
ハンターが2001年にリンゴ・オールスターズに参加したラスベガスのショーの映像を見ましたが「すべての若き野郎ども」とこの曲は大盛り上がりでした。シーラ E. とリンゴのツインドラムに、ベースはELPのグレッグ・レイク。キーボードと曲紹介はハワード・ジョーンズが担当しており、必見のステージです。
Just Another Night
E.ストリート・バンドのマックス M. ワインバーグのドスドスするドラムから始まるイアンのオリジナル曲。ミディアム・テンポのエキサイティングなオープニング。イアン・ハンターの歌も徐々に熱を帯びてくる。
Wild East
モット・ザ・フープルの “Sucker” あたりの曲を思い出させるミディアムな曲。そこではグラム・ロック風のサックスが活躍していたが、この曲ではクラレンス・クレモンズ風のサックスが伸び伸びとナイスなグルーブで、明るいブルース・スプリングスティーンの曲を思わせます。
Ships
バニー・マニロウがカバーしトップ10ヒットを記録。英国人らしく潮の香りのするいいバラード。
When the Daylight Comes
初めて聴けばイアンの声とは思えない優しいネコ撫で声で歌う。「お日様が昇ったら・そっちに行くよ」なんて。歌詞を読んでも毒や皮肉のない、明るくハッピーな曲。
Life After Death
「You’re Never Alone with a Schizophrenic」の30周年記念デラックス・エディションには、「火の玉ロック」で有名なジェリー・リー・ルイスの名曲 “Whole Lotta Shakin’ Goin’ On” が収録されている。”Life After Death” はロックン・ロールの古典をオマージュし、ピアノは “Whole Lotta Shakin’ Goin’ On” 風で、低音からヒステリックなシャウトまで交えたボーカルはジェリー・リー・ルイスやエルヴィス・プレスリーを彷彿とさせる。アープシンセやパワーコードが響く音設計は現代的であり、構成の練られたエキサイティングなロックンロール。アルバムのタイトル「死後の世界を信じるかい?」とはハンターの死への恐れや反省を示して「タバコを吸いすぎなければよかった」「不信心な行いは慎めばよかった」といったユニークな内容が歌われている。
Standin’ in My Light
お前が光を遮り、私の視野を狭めていると非難?している。しっとりと暗いバラード。
Bastard
イアン・ハンターらしく毒をはらんだ言葉選びが楽しい。ボーカルには凄みがあり、ギターリフは刺々しい。元ヴェルベット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルによるアープシンセは、刺々しく緊張感を高めるが、マックスの重いドラムが主役は俺だと主張している。
The Outsider
アウトサイダー(部外者)でテーマは社会的疎外感と孤独。イアン・ハンターの詩は時にボブ・ディランのように意味不明。エンディングに相応しい暗いバラードを切実に歌い上げる。
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