Santana [Caravanserai]

ROCK

『キャラバンサライ』は1972年にリリースされた4作目。同じくコロンビアレコード所属のマイルス・デイビスの影響も言われるが、ファロア・サンダースやジョー・ヘンダーソン、コルトレーンの妻アリス・コルトレーンの作品で知られるスピリチュアルジャズの要素を取り入れている。サンタナは、ラテンロックの創始者としての音楽的冒険心と革新性を発揮し、新たな音楽的領域を拡張したアルバムです。

ジャケットには砂漠の地平線に沈む歪んだ太陽を背景にシルクロードを旅する商隊の姿が描かれている。エレクトリック・ギターや8ビートを取り入れてジャズはロックに接近し、サンタナはロック側から構築的なジャズに接近している。ジャンルや音楽的境界を拡張し、フュージョンの先駆け、もしくはプログレッシブ・ロックといえる作品をつくりあげている。現在の感覚でも他に類を見ない傑作だと思います。

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1. 復活した永遠なるキャラバン (Eternal Caravan of Reincarnation)
2. 躍動 (Waves Within)
3. 宇宙への仰視 (Look Up (to See What’s Coming Down)
4. 栄光の夜明け (Just in Time to See the Sun)
5. 風は歌う (Song of the Wind)
6. 宇宙への歓喜 (All the Love of the Universe)
7. フューチュア・プリミティヴ (Future Primitive)
8. ストーン・フラワー (Stone Flower)
9. リズムの架け橋 (La Fuente del Ritmo)
10.果てしなき道 (Every Step of the Way)

1. 「復活した永遠なるキャラバン (Eternal Caravan of Reincarnation)」
鈴虫の音、エリック・ドルフィーのバスクラ、もしくは尺八の音色を思わせる調べは日本の夏の夜をイメージさせる。不協和音はフリージャズ、スピリチュアルジャズへの共鳴を思わせ、ロックから離れた地点に到達している。パンアジア、ユーラシア大陸的な視点でアルバムは作られている。ジャケットからイメージするのはこの曲です。異世界へ旅へと誘う美しい曲です。

2. 「躍動 (Waves Within)」
前曲を導入にし、ファンキーなベースとオルガンが奥行きのあるサウンドスケープを構成している。細かいリズムは静かに躍動し、サンタナのギターはアリス・コルトレーンのハープを思わせる音色で波のように大きなウネリをもたらしている。おおらかなギターは前曲同様、ジャズともロックとの言えない境地に達している。ギターだけが主役ではない、トータルにデザインされたサンドスケープは躍動感に満ちた素晴らしさ。

3. 「宇宙への仰視 」Look Up (to See What’s Coming Down)
ジャズとロックの要素が融合したこの曲は、マイルス・デイビスの75年「アガルタ」に多大な影響を与えているの。サンタナと同じくコロンビアと契約するマイルスは、確実にこのアルバムを聴いている。レジー・ルーカスのリズムギターにピート・コージーのギターが絡むアンサンブルはこの曲へのオマージュだと思います。71年当時ですでにこの完成感と類を見ないサウンドスケープ、アンサンブルの重厚さと躍動感、ファンク、ロック、スピリチュアル・ジャスの理想的な融合がここで実現している。デヴァディプ=サンタナが見上げ、降臨を待つのは神かビシュヌ神か?

4. 「栄光の夜明け (Just in Time to See the Sun)」
1~3を序章としてボーカル曲が登場。発売当時には脱退している創設メンバー、グレッグ・ローリーの作曲。彼のボーカルとオルガンで旧サンタナバンドを思わせるラテン・ロックですが、もう一つ違う次元に到達しているようです。ファロア・サンダーズと関係も深いレオン・トーマスが73年のソロアルバム「フル・サークル」でカバーしている。彼は一時サンタナバンドに加入し「ロータスの伝説」になる日本公演に同行している。

5. 「風は歌う (Song of the Wind)」
サンタナと、後にグレッグ・ローリーとジャーニーを結成するニール・ショーンの美しいインプロヴィゼーション。グレッグのオルガンも素晴らしい。メロディアスでありながらダイナミックで美しく爽やか。まさに風は歌う。この曲が気に入れば、パット・メセニーの79年「アメリカン・ガレージ」を聞きたくなる。カルフォルニアの青い空に爽やかな風を想像できる爽快さ。

6. 「宇宙への歓喜 (All the Love of the Universe)」
壮大なタイトル。スケールがでかい!サンタナとニール・ショーンの共作。サンタナのボーカルは失礼ながらお風呂の鼻歌風ですが、素朴な味わいがある。穏やかな歌のバックでも躍動するベースとリズム。後半のギターとオルガンのインスト展開がなんともカタルシス。ここまでで美しいと表現する言葉を失う。

7. 「フューチュア・プリミティヴ (Future Primitive)」
導入はアンビエント風に始まり、ラテンなパーカッションが前面に出たリズム・セクションが印象的。エキゾチックな雰囲気を持ち、アルバム全体の流れを一時的に落ち着かせる役割を果たす。

8. 「ストーン・フラワー (Stone Flower)」
アントニオ・カルロス・ジョビンのサンタナ流カバー。ボサノバのリズムとサンタナのギターが融合し、リラックスした雰囲気。こういうサンタナもいい。

9. 「リズムの架け橋 (La Fuente del Ritmo)」
ジェイムズ・ミンゴ・ルイスが作曲。ラテン要素強し。ギターもオルガンも頑張るが、リズムが主役のデスカルガ。

10.「果てしなき道 」(Every Step of the Way)
アルバムの最後を飾るこの曲は、金管風の音も入り映画のフィナーレを感じさせるインスト。「何かを成すための全ての過程」という意味は不明だが、今日的には「決定するまで全ての過程が等しく存在する」量子論的な意味が見えてくる。

前半の素晴らしい展開だけで大満足なアルバムですが、アルバムを通して聴くには、リスナーの覚悟と気力が求められる。私はどちらかと言えばスピリッチュアルなジャズを好むリスナーなので、後半のラテンな展開がちょっと楽しめない。サンタナのアルバムではIIIと本作が一番好きです。バディ・マイルスとの共演ライブもいいし、「アミーゴ」もいい。

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